高度で複雑なIT運用をアウトソースすることで、54%ものコストを削減
DX推進企業におけるDCS「運用業務アウトソーシング」の真の価値とは?
2022.02.28
- クラウド・マルチクラウド
- コンサルティング
- システム運用
- データセンター
- コスト削減
- セキュリティ、BCP対策
- 業務効率化
- 顧客価値向上

当社はシステム運用業務アウトソーシングを手掛けております。
本稿では決済プラットフォームサービスを提供されている企業様への支援事例を元に、詳細をご紹介します。
※本ページ内に記載の所属、役職等の情報は掲載当時のものです。
大きくビジネス環境が変化する中、複雑化したITシステムの運用業務負荷が足かせとなり、DX推進やお客様への新たなサービス提供が思うように進まない、とお悩みの企業は多い。本稿では、当社が提供する「運用業務アウトソーシング」の事例を紐解き、プロジェクトの具体的な進め方とお客様に提供する真の価値について、詳細を解説します。
背景・課題
「ITシステム運用業務」の負荷増大が、企業のDX推進・競争力強化の足かせに
経済産業省が2018年に発表したDX (デジタルトランスフォーメーション)レポート『2025年の崖』では、「日本企業のIT 関連費用のうち、8 割以上が既存システムの運用・保守に充てられている」と指摘されています*1。そして本レポートで指摘されている労働人口の減少・IT人材の人手不足も、顕在化し始めています。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大によりビジネスを取り巻く環境が大きく変わり、それに伴う働き方の変化が急務となりました。
そのため、ITシステムの運用業務をいかにスリム化し、限られた人的資源をDX推進やより付加価値の高いサービス提供などの「本来業務」に投入するかが、各企業が今後生き残るために欠かせない取り組みとなっています。
その解決策の一つに、「運用業務を社外にアウトソースする」ことが挙げられます。しかしながら長年にわたり高度化・複雑化してきたITシステム運用を本当に外部に任せられるのか、引継ぎにはどのくらいの業務負荷やコストがかかるのかなど不安要素が多く、本格検討に至らない企業が多いのではないでしょうか。

写真左から、遠山大介、センター長 西根建、佐藤茂
今回ご紹介する事例でプロジェクトマネージャーを務めた三菱総研DCS(以下、DCS)千葉情報センター長の西根は、お客様が直面していた課題について、次のように語ります。「本事例のお客様は、ブロックチェーン・テクノロジーを活用した決済プラットフォームサービスを展開しています。24時間365日のミッションクリティカルな監視、運用が求められるため、対応にあたる20名ほどの社内運用スタッフチームの負荷は非常に高く、日々の対応に追われる中でどうしても業務がサイロ化・属人化してしまい、維持管理にかかるコストも増大していました。シフト体制による運用も働き方改革の観点で限界があり、加えてIT人材確保が難しい情勢の中、要員不足や要員調達リスクの解消も課題でした。こうした課題を受けて当社は、大きく2つのフェーズに分けて、本運用業務のアウトソーシングを推進しました」
■お客様業種:
決済プラットフォームサービスの提供
■お客様が抱えていた課題:
✔ 24時間365日のIT運用業務負荷と維持管理コストを削減したい
✔ 現状の要員不足と将来の要員調達リスクを解消したい
✔ 属人化した業務を可視化し、品質と効率を向上させたい
実行フロー
【フェーズ1】
オンサイト対応による業務支援で現状の詳細把握・ドキュメンテーションを整備
~新運用のグランドデザイン設計~
▶期間:2020年4月~2021年3月

マネージドコンサルティンググループ
武田清
フェーズ1としてDCSでは、お客様の業務実態を捉えるためにまずはオンサイト(お客様拠点)にスタッフを約10名常駐させ、24時間・365日のシフト体制で運用オペレーション業務を受託。その中で収集・把握した実態を元に、現場課題の整理から業務運用に必要不可欠なドキュメント作成までを一貫して実行すると共に、将来のDCSへの移行後の新運用もイメージし、運用のグランドデザインを設計しました。
本件のプロジェクトリーダーである武田は、この工程の重要性を次のように話します。「世の中の業務アウトソーシングの多くは、提供側のサービスメニューにお客様が合わせるものがほとんどですが、当社はそれではお客様の真の課題解決にはつながらないと考えます。そのため、当社ではまずはお客様の業務をオンサイトで実際に我々が請け負い、お客様の業務負荷を軽減しながら、徹底した業務の可視化とドキュメンテーションを実施します。設計書、作業フロー、手順書など、お客様から収集するだけでなく、ドキュメントがない業務については新規でドキュメント等も作成し、その数は100点以上になりました。この過程でお客様にもあるべき業務の姿を捉えていただけますし、組織のサイロ化や業務プロセスの冗長化といった問題点も、我々と共に解消いただけます」
フェーズ1:実施内容
・お客様拠点にDCSスタッフを常駐、24時間・365日のシフト体制で運用業務を支援
・収集・把握実態を元に、現場課題整理と業務ドキュメント整備を一貫して実行
・将来のDCSへの移行後の新運用もイメージし、運用グランドデザインを設計・策定
フェーズ1:実施効果
○DCSスタッフのオンサイトによる業務サポートで、お客様の業務負荷を軽減
○ドキュメント整備により業務フロー可視化、属人化解消と業務効率向上
○DCSへの移行・新運用をイメージしたグランドデザインが完成
【フェーズ2】
運用作業場所をオンサイトからDCS拠点に移管・フルアウトソースへ
~運用コストの大幅削減と、さらなる業務品質向上を推進~
▶期間:2021年4月~2021年9月

フェーズ1の実施により、お客様の業務負荷削減と見える化など一定の成果は得られたものの、その効果はまだ十分とは言えません。お客様からも運用コスト削減についてさらなるリクエストがあり、DCSは業務場所を都内のお客様拠点内から、DCS拠点(DCS千葉情報センター)へ移管することを提案。フェーズ2として実施されることが決定しました。
アカウント担当営業の松井は、この経緯を次のように話します。「お客様からフェーズ1をご評価いただき、さらなるご要望として運用コスト削減が挙げられました。そのためにはDCS拠点にシステム監視を含む運用作業を移管して、当社の汎用オペレータを活用いただくことがベストと考え、お客様に提案しました。これによりお客様は要員不足と要員調達リスクから解放され、社員の方々はより付加価値の高い業務に注力いただけるようになります」
DCSは週次による定例会を実施。お客様と密に連携しながら移管に向けたプロジェクトを、約3か月かけて実施。その後、約2か月間の試行運用を経て2021年10月、シームレスな業務移管を実現しました。
プロジェクトリーダーの武田は、この際の進捗を次のように振り返ります。「フェーズ2では、業務場所を移管させる際に必要となるお客様とDCSの役割分担とワークフローをお客様と協議の上で固めつつ、ファシリティを含めた受け入れ態勢の整備を行いました。フェーズ1でお客様業務を詳細に把握し、可視化できていましたので、計画通り約半年間でスムーズにDCS拠点への業務移管が完了しました」
フェーズ2:実施内容
・移管業務範囲と役割分担、エスカレーションや意思決定などのワークフローを整理し「運用方式設計書」を両社協議の上で策定
・PCI DSS認証への準拠対応*2
・フェーズ1で作成した各種業務ドキュメントをお客様/DCSの2拠点実施前提にアップデート
・これまでに得た詳細な運用知識を基にDCSオペレーションスタッフへの細やかな教育を実施
・DCS拠点側の回線・端末などファシリティの準備

フェーズ2:実施効果
〇移管前と比較し運用費用を約54%削減
DCS拠点への移管によるコスト削減効果は、移管前との比較で約54%減となる見込みです。これはお客様の人件費が削減されることに加えて、
専任から汎用オペレータを活用いただくことによるDCSの対応人件費が削減される効果です。
〇運用業務の継続的な改善活動による、業務効率化、サービスレベル向上
ドキュメントのバージョンアップと、DCSの運用・改善ノウハウを組み合わせ、現場にムリ、ムダなく安定稼働を実現。
業務効率化とサービスレベル向上策を、継続して実施中です。

今後の展開
伴走期間を経てDCSへさらなる業務集約
~継続して業務品質と効率向上を目指す~
現在、お客様拠点に2名のDCSスタッフが継続して常駐し、管理の支援を行っていますが、一定の伴走期間を経た後は、さらなる業務集約を予定しています。また、現状はお客様が実施している関係ベンダーとの連携やエスカレーション対象業務についても集約を図り、DCSでの窓口の一本化によって、さらなるお客様業務負荷の削減と共に業務品質と効率の向上を図る計画としています。
「運用業務アウトソーシング」の真の価値とは?
DCS「運用業務アウトソーシング」の真価は、お客様の業務負荷やコストの削減だけにとどまりません。
数多くの運用業務移行プロジェクトをリードしてきた武田はその貢献について、次のように話します。
「長年にわたり複雑化・高度化しているIT運用をアウトソースするためには、暗黙知化・属人化した業務をつぶさに確認し、マニュアルなどのドキュメントも整備して可視化・標準化する必要があります。これは今、特に製造業で課題となっているベテラン作業者の退職に伴う技術継承や、全業界で課題となっている人手不足への対応としても有効です。
とはいえ、日常の業務に追われてなかなか手が回らないのが、多くのお客様の実情でしょう。当社は何よりも『お客様に寄り添う』姿勢を重視し、まさにその部分の担い手として貢献したいと考えています」
DCS千葉情報センター長の西根は、IT運用をアウトソースする経営視点での価値について、次のように話します。「いま、多くの企業ではDX推進やアフターコロナを見据えたテレワーク拡充にオフィスの再編、SAP更改への対応など、ITシステム部署に対する経営からの期待が、これまでになく高まっています。その期待に応えるためには業務負荷の高いITシステムの運用業務のスリム化が欠かせません。ぜひ当社のサービスを活用いただき、人材と予算のリソースシフトによる『攻めのIT』を実現ください。

- 出典:経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html - クレジットカード情報および取り引き情報を保護するために2004年12月、JCB・American Express・Discover・マスターカード・VISAの
国際ペイメントブランド5社が共同で策定した、クレジット業界におけるグローバルセキュリティ基準。
引用元:日本カード情報セキュリティ協会(https://www.jcdsc.org/pci_dss.php)