今や「クラウド時代」と言っていいほどビジネスに必要不可欠となった「クラウドサービス」ですが、インターネットの普及がはじまった2000年にはこういった時代になるとは予想されていませんでした。
そう語るのは、2019年11月28日の三菱総研DCS主催セミナーに登壇された三菱総合研究所の中村本部長です。現在のクラウド時代における企業・産学での取り組み・トレンドを具体例に交えて説明し、マルチクラウドのその先がどうなるかを話されました。
本コラムでは、本セミナーの概要とその魅力をご紹介します。

株式会社三菱総合研究所 執行役員 営業本部長 中村秀治
1985年 (株) 三菱総合研究所入社。情報通信政策研究本部長を経て、現本部に着任。
情報通信審議会や電波政策ビジョン懇談会の委員活動の他、社外団体公職を歴任。
InteropTokyo 2019やIoT国際シンポ2019等多数の講演実績あり。
主な著書は「知っておきたい電子マネーと仮想通貨」など。
企業のマルチクラウド戦略の現状
企業の情報システムなどで、複数の異なるクラウドサービスを組み合わせて利用する「マルチクラウド」という言葉を耳にすることが多くなりました。アメリカでの統計を見ると7割以上の企業がマルチクラウドを利用しています。その利用形態のほとんどは、本番環境で2種類、PoC段階で2種類、計4種類のパブリッククラウドを工夫して組み合わせて使用しています。
ビッグデータ時代とは言いますが、実際のところはデータベース内にデータを保存し、データセンター内でハンドリングしている事が多いのが実情です。
本来はデータ保有者である企業が資産であるデータを自由に扱えるべきなのです。これは現状ではパブリッククラウド上のアプリケーションとデータの結合度が高く、一部のデータだけを移行・変更するということが非常に困難となっている場合が多いためです。
しかし、マルチクラウドを適切に活用すれば、アプリケーションとミドルウェアをシンプルかつ軽量化し、データ利用の自由度も維持して保有することができます。
ビッグデータ活用を支えるプラットフォームとは
ビッグデータ活用の流れを細分化すると、まずはセンサーあるいは情報発信機器からデータを一箇所に蓄積させ、データベース化して格納するのが基本の流れです。
格納以降は速度が重視されますが、蓄積や処理においては速度よりも大容量かつ低コストであることが重視されます。
このように、蓄積、処理、格納といった各機能の特性に応じて適切なストレージを選択すると結果的にサイロ化してしまうのです。

エッジとクラウドの併用が現実モデル
とりわけインダストリアルIoTを進める企業では、製造ライン管理としてライン上の機械や設備にセンサーを取り付けて管理データを映像で撮影しています。センサーを通じて取得するデータは膨大であるために、大容量であることと分析などのスピードが求められるのです。
しかし、そのために初めから高額なクラウドサービスを導入することが正解なのでしょうか?膨大なデータの処理プロセスを必要な機能に分解し、