<導入事例>
コミュニケーションロボットがつないだ現代アートと子どもたち
~横浜市のDX推進を支援~
横浜市 様
- ロボティクス
- ロボティクス・RPA

横浜市デジタル統括本部 企画調整部 デジタル・デザイン室 室長 洲崎正晴様
横浜市にぎわいスポーツ文化局 文化芸術創造都市推進部 創造都市推進課 担当課長 丸山晶子様
NAO(Link&Robo for グローイング※2)
三菱総研DCS 新井美音/山口凪
2024年8月取材
※1 所属、役職等の情報は2024年8月9日時点のものです
※2 Aldebaranの小型二足歩行ロボット「NAO」を活用し、三菱総研DCSにて独自に提供しているサービスです
- テーマ
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子ども向けアートプログラムでのコミュニケーションロボット 「Link&Robo for グローイング(以下、Link&Robo)」の活用
- 期間
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2024年3月~2024年5月
- 概要
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みなとみらい本町小学校放課後キッズクラブおよび障害者スポーツ文化センター横浜ラポールで、アート作品を鑑賞してクイズを作成するワークショップを実施。
参加者は、横浜トリエンナーレの展示作品を鑑賞した後、ロボットと楽しくコミュニケーションを図りながら、作品に関連するオリジナルクイズ作りに挑戦。
作成されたクイズは、横浜トリエンナーレの会場で行われたイベント「ロボットと遊ぶ『野草』クイズ大会」内で、Link&Robo を使用して披露された。
- POINT 01
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現代アートの入口コンテンツとしてコミュニケーションロボットを活用
- POINT 02
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子ども向けプログラムの企画・運営をDCSの知見で伴走支援
- POINT 03
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横浜市のデジタル推進事業における公民連携の成功事例
現代アートの国際展「横浜トリエンナーレ」でアートに親しむきっかけとなる企画を検討

洲崎様:
私が所属する横浜市デジタル統括本部デジタル・デザイン室は、横浜市のDX推進を目的に発足した部署です。市民サービスの向上や職員の業務効率化を目指し、企業と協力して課題解決に取り組むため、公民連携のプラットフォーム「YOKOHAMA Hack!(以下、YHack)」を担当しています。
丸山様:
にぎわいスポーツ文化局は、民間コンテンツを含む大規模イベントを契機に、まちを楽しんでいただく仕掛けを戦略的に展開することで、にぎわいを創出し、まちの活力につなげる役割を担っています。私は創造都市推進課に所属し、現代アートの国際展である「横浜トリエンナーレ」の企画から準備、運営までを担当しています。
横浜トリエンナーレは、文化芸術創造都市・横浜の発展をリードし、多様性を受け入れる心豊かな社会の形成に寄与することを目指し、2001年から3年に一度開催されていて、今回で8回目を数えました。「アートでひらく」、「世界とつながる」、「まちにひろがる」を目標に掲げており、アート初心者やこれまで現代アートに関わることが少なかった子どもたちが、現代アートに触れるきっかけを検討するなかで、DXの活用を視野に入れ、デジタル・デザイン室にデジタル技術を活用した新たな取り組みができないか相談しました。

愛嬌のあるコミュニケーションロボットの姿に
子どもと現代アートの懸け橋を予感
洲崎様:
ちょうどデジタル・デザイン室の企画で、障害者スポーツ文化センター横浜ラポールでのI・TOP横浜ラボの実証プロジェクトに採択されたLink&Roboを、市庁舎内で展示・紹介する場があり、丸山さんにはその展示会を紹介しました。

丸山様:
イベントに関わる職員と展示会に行き、実物を見ました。子どもたちが現代アートに触れる入口となる企画を探っていたので、愛嬌のあるロボットの姿にとても興味をひかれました。また、Link&Roboにはロボットが話す言葉をタブレットから入力できる機能があり、子どもたちが自分の感じたことをその場でアウトプットできそうなイメージがありました。
DCSと打ち合わせを重ねるうちに、Link&Roboが現代アートの鑑賞と親和性が高いと感じられるようになり、障害の有無に関わらず、子どもたちが楽しみながら現代アートに触れられるような、アート作品を鑑賞してクイズを作成するワークショップ「ロボットと遊ぶ『野草』鑑賞プログラム」や、クイズを通して作品を知ることができる「ロボットと遊ぶ『野草』クイズ大会」などの企画が固まっていったのです。
参照記事:ロボットと遊ぶ『野草』鑑賞プログラム
ロボットをきっかけに現代アートに触れた子どもたち
丸山様:
ワークショップには、ロボットやプログラミングという言葉にひかれて参加した子どもたちが多く、おそらく今までアートにはそれほど興味がなかった子が、ロボットに出題してもらうクイズを作るために現代アートを鑑賞しました。ロボットをきっかけに、現代アートに触れる。これは目的にかなった、大変意義のあることです。
Link&Roboは操作も簡単で、小さな子どもたちも年長の子どもに助けてもらいながら、あっという間に操作を覚えていました。ロボットがうまく動かなかったときには、「NAO、がんばれ~!」と子どもたちが応援する温かなやりとりも見られました。参加した子どもの保護者からは、「はじまるまでは人前での発表に緊張していた子どもも、本番ではロボットと一緒に楽しそうにクイズを出題し、達成感があったようです」と感想をいただくなど、現代アートとの出会いが、楽しく記憶に残るものとなったのではないかと思います。

点から線へ。庁内の職員にも刺激となった好事例

洲崎様:
今回の取り組みは、特別な支援を必要とする子どもたちを対象とした民間企業のソリューションの一つが、横浜トリエンナーレという国際的なイベントの可能性を広げたという点で、非常に評価できますし、ほかにも評価したい点がありました。
まず、職員に新たな気づきをもたらしたことです。Link&Roboは、特別支援学校・学級を対象としたサービスですが、にぎわいスポーツ文化局はこのロボットを見て、別の視点から「国際的なイベントで活用できる」とひらめきました。I・TOP横浜ラボでの実証実験、市庁舎での展示会開催、横浜トリエンナーレでの活用と、3つの点が線につながった好事例です。これは、他の職員が「自分たちの業務に使えるデジタル技術があるかもしれない」と、DXを自分事として考えるきっかけになったと思います。
また、国際的なイベントで先端技術を使った実績は、横浜市のチャレンジ精神を示すものとして有効に機能したと考えています。愛嬌があって温かみのあるロボットは、横浜市が取り組むデジタル推進活動のPRにも一役買ってくれました。
非常に手厚い伴走支援で、企画運営をサポート

丸山様:
Link&Roboを初めて見た当初はまだ、具体的なプログラム内容を想像できませんでした。子どもたちがロボットをどう感じ、どう受け入れていくのか、その知見が豊富なDCSとアイデアのキャッチボールを何度も行った結果、最終的にとてもよいプログラムを実施することができました。
ワークショップの企画、資料作成、イベント当日の運営サポートまで、製品の提供以外のことにも、企画立案当初から非常に手厚く伴走支援していただきました。子どもたちが飽きないための工夫や配慮、ロボット初心者の私たちスタッフに対してもきめ細やかなアドバイスがあり、ワークショップやクイズ大会をスムーズに運営することができました。DCSと一緒に新しいアート鑑賞の入口を作ることができて、とてもうれしく思っています。
これから、2027年に開催を予定している9回目の横浜トリエンナーレに向けての準備がはじまります。新たな企画にもデジタル技術の活用は必須と考えていて、ロボットも選択肢の一つです。デジタル技術の進歩は激しく、最新技術やデジタル施策の知見に長けたDCSには、これからもアドバイスや新たなご提案を期待しています。
横浜市のDX推進の大きな一歩に

洲崎様:
今回の取り組みは、横浜市のDX推進の大きな一歩になりました。ロボットと横浜トリエンナーレとのコラボレーションには、最初とても驚きましたが、これをきっかけに職員が自らの業務にDXを取り入れることで、市民生活の課題解決につながる可能性に気づくなど、意識が変わったのではないかと感じています。その一助となるよう、公民連携のプラットフォームYHackの活用に力を入れていきます。シーズとニーズを正しくマッチングさせるためにも、課題と実装の間をファシリテーションする縁の下の力持ち的な自分たちの使命は重いと認識しています。
DCSは、Link&Robo以外にもさまざまなシーズをお持ちです。市民の生活を豊かにするため、DCSにも引き続きご協力いただければと思います。
- DCS担当者からのコメント
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アートイベントとロボットのコラボレーションは、当社にとって新しい挑戦でした。いかに楽しくアートに触れてもらうか、今まで培ってきた知見を活かしてイベント内容を企画し、子どもたちの笑顔と発見を引き出すことができました。Link&Roboの新たな活用シーンを見出すことができ、私たちも大きな学びを得ました。
Link&Roboは、今年度、横浜市内の特別支援学校2校に導入されています。
これからも、お客様に寄り添い、共に考えながら、課題解決に向け尽力してまいります。
企業プロフィール

横浜市 様
神奈川県の東部に位置する同県の県庁所在地で、政令指定都市。人口は約377万人(2024年8月1日現在)と日本の市町村で最も人口が多い。
日本を代表する国際貿易港である横浜港を基盤に、首都圏の中核都市としての役割を担う。
https://www.city.yokohama.lg.jp/
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- Aldebaranの小型二足歩行ロボット「NAO」を活用し、三菱総研DCSにて独自にサービス提供をしています。
- 「NAO」はAldebaranの登録商標です。