Project Story

#03

Cloud System

Introduction

近年、急激に進んでいる入試の多様化。大学入試においてはその動きに応えるため、インターネット出願の仕組みを導入し、負荷軽減や業務の効率化を図る動きが定着してきているが、高校受験・中学受験に目を向けると、受験者数の違いなど、規模の小ささがネックとなり、インターネット出願が可能な学校は皆無の状態だった。三菱総研DCSは、そこにビジネスの可能性を見出し、中高入試の特性に合わせたシステムの構築を模索。クラウド型サービスパッケージとしてリリースしたシステムは、今では全国で250校以上の学校と、30万人の受験生・保護者が活用する“インターネット出願のスタンダード”になりつつある。

未開拓領域へのチャレンジ。
将来的なスタンダードを意識しての開発。

今回、三菱総研DCSが開発したシステムは、中学・高校入試のインターネット出願および資料請求、イベント予約、合否照会、そして入学金のオンライン決済などを可能にするクラウド型のサービスパッケージだ。システムの着想から開発、運用、そして営業までを統括する阿部は言う。「学校は、システム化・効率化が最も遅れている領域の一つで、当初はマーケットとして成立するのかという危惧がありました。しかし、見方を変えれば未開拓領域で、成功すればマーケットリーダーになれる。課題は確実に存在しているわけで、それならば新たな領域を切り拓くための挑戦をしたほうがいい。当社らしい決断だったと思います」(阿部)。

プロジェクトチームがまず行ったのが、学校側への徹底したヒアリングだ。その上で運用側の学校、そして利用側の受験生・保護者、双方の使い勝手の良さを考え、要件を取りまとめ、仕様を検討し、設計・構築、テストへと進めていった。開発リーダーの北川曰く「パッケージとしての汎用性を活かしながら、例えば学校ごとに違う受験料、あるいは受験番号設定(数字のみ、アルファベットと数字の組み合わせ、4と9は使わないなど)への対応をしつつ、将来的にスタンダードになりうる仕組みへのブラッシュアップを心がけました。また、不特定多数のユーザーがどんな使い方をするかわからない、そんな状況を踏まえ、あらゆることを想定して、スマートフォン対応なども図り、開発を進めました」。かくして初期のパッケージが完成。「中学・高校の未来を変える、受験生たちの未来への羅針盤」という意味を込めて「miraicompass」と名付けられ、リリースされる。

大逆風からのスタート。
そして先行7校の働きかけで
一気に横展開へ。

「システム自体は間違いなく、中学・高校入試の仕組みを変えることができるものでしたが、立ち上げ当初は、ほとんどの学校が否定的でした。“願書は手書きで心を込めて、そして自ら学校に届けるもの”という想いも強く、大逆風からのスタートだったのです」(阿部)。そんな状況を打破するきっかけが、インターネット出願による効率化の必要性を感じ、当初から「miraicompass」を導入してくれた7校の先生や職員だった。彼らがオピニオンリーダーとなり、他の学校へ働きかけ、一気に横展開への勢いが生まれたのである。学校には地域ごとに横のつながりがあり、結束力も強い。本来なら、少数派の意見は通らないのが慣例だが、今回は違った。「初期コストはかかるが、今までの手作業、人件費を考えれば、数年で費用対効果を期待できる。さらにICT戦略が進めば、より多様なサービスを低負荷で提供しつつ、人材を本来の業務に配置することができる。結果的には『miraicompass』の導入が、少子化問題など学校が抱える課題を解決するきっかけになりうる」と阿部たちとともに、導入のメリットや価値を広めてくれたのだ。現状の課題をなんとか克服したい。そんな想いは徐々に浸透し、遂には導入賛成派が多数を占める状況へと流れは変わる。

「その後は、営業と開発が一体となり、一気にビジネス拡大への取り組みを進めました。ビジネスとしての可能性が高まれば、当然、後発企業も参入してきます。我々は先行であるメリットを活かし、今現在も常に一歩先を見据えた開発に向き合っているのです」と語るのは、プロジェクトマネージャーの石井。例えばユーザーからの問い合わせ対応をするヘルプデスクの設置、また、オープンキャンパスなどのイベントを支援する機能の充実化、さらには受験生への情報提供機能を追加するなど、サービスの幅を広げ、深めるアプローチを行っている。「我々が目指しているのは「miraicompass」をデファクトスタンダードとすること。今後の課題はサービスの質を高めるためのシステムの完成度です。ユーザーの声に耳を傾け、誰からも支持されるサービスへ。このブランド価値向上に、開発面から貢献していきたいと思います」(北川)。

プロジェクト概要

インターネットを介して、中学・高校入試の出願や資料請求、イベント予約、合否照会、入学金のオンライン決済などを可能にするクラウド型のサービスパッケージ。学校ごとに異なる受験料、あるいは受験番号設定にも対応することが可能で、システム化・効率化が最も遅れている教育現場において、大幅な業務の効率化を図ることに成功した。

学生たちの未来への羅針盤となるよう、
さらなる進化・普及を目指す。

現在、全国への営業の最前線で精力的に動いているのが、学校の職員から三菱総研DCSへ転職し、このプロジェクトに加わった伊藤である。「学校が感じている課題を、経験者として理解・共感できる。これは私ならではの強みだと思っています。これからも学校によって異なる課題を受けとめ、一緒になって解決策を考え、最良の提案をしながら、出願・受験という大切な局面をサポートしていきたいと思います」(伊藤)。「miraicompass」は、いわば受験という入口におけるシステム。三菱総研DCSがどこよりも早くここを押さえた意味は大きく、今後は受験前に何ができるか?卒業という出口までに何ができるか?という観点から、新たなシステム化ニーズを探れるという。現に「miraicompass」の開発プロジェクトは、学生の情報管理、成績管理、学生や保護者への情報発信、さまざまな決済機能やアプリによる学校運営の支援など、新たな機能を追加するためのアプローチを開始している。「将来的には学生の就活サポート、そして同窓会管理などもフォローできるはずです。サービス拡大の可能性はさらに大きく広がると考えています」(阿部)。一方、技術革新という面からも新たなチャレンジテーマを掲げる。「AIやIoTといった新技術を活用し、学校運営を戦略的に支援する仕組みを考え、具現化していきたい。少子化による受験生減少など、さまざまな悩みを抱える学校をICT戦略によって活性化できたらと思っています」(北川)。

「miraicompass」は今、258校に導入されている。「私たちにはICT戦略パートナーとして学校を支えていきたい、という思いがあります。現に営業の現場では次々と新鮮なアイデアが生まれています」(伊藤)。例えば甲子園球場で「miraicompass」を大々的にアピールする、学生スポーツのスポンサーとしてmiraicompass杯を開催するなどの広報戦略アイデアも持ち上がり、実現に向け始動している。また、地域の優秀な学生を囲い込むためのエリアマーケティングをICTで実現するための検討も始まっているという。 当面の目標は全国500校への導入。そして「miraicompass」が文字通り、学生たちの未来への羅針盤となるよう、さらなる進化・普及を目指していく。

PROFILE

阿部

ビジネスイノベーション本部 部長
2000年中途入社
情報管理学科卒

石井

ビジネスサービス本部
2002年入社
経済学部経営学科卒

北川

ビジネスサービス本部
2010年入社
政治経済学部卒

伊藤

ビジネスイノベーション本部
2015年中途入社
英米語学部卒

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