Project Story

#01

Pooling system

Introduction

日本企業のグローバル化は、近年、急速に加速している。国内市場が成熟する中、各企業においては経済新興国をはじめ、世界市場が主戦場となりつつある。こうした傾向の中、海外で事業展開する上で課題とされてきたのが、財務管理の更なる効率化だった。その状況改善に有効なのが、企業グループ全体の資金を一元管理し企業財務の最適化を支援する「プーリングシステム」である。今回、三菱総研DCSが挑んだ「プーリングシステム」の開発は、同社の歴史に新たな一歩を刻むものとなった。

グローバル企業の資金効率化に寄与する
チャレンジングな試みが始まった

今回三菱総研DCSが開発に挑んだ「プーリングシステム」とは、世界各国の銀行口座を対象に、クロスボーダーの資金移動をタイムリーに提供するというもの。それによって、企業グループ全体の資金効率化が可能となる。たとえば、銀行の決済ネットワークを通じて、予め定められた範囲より資金余剰がある口座からは資金を吸い上げ、資金不足にある口座には資金が貸し出される。こうしてグループ企業内部で資金が融通され、有効活用されると、グループ内の余剰資金と外部借入金を相殺し、財務指標の改善等が可能になるのだ。三菱総研DCSの顧客であるメガバンクにおいても、海外向けサービスの更なる高度化が検討されていた。営業網を通じてその情報を得た三菱総研DCSはアクションを開始する。当初、開発体制の組成に奔走したのが、現在金融事業本部で部店長を務める遠藤である。

「当時は、別に遂行していた大型案件が重要な局面を迎えていました。人員に余裕はありませんでしたが、今回のプーリング案件はどうしてもチャレンジしたいという気持ちと、若手のチャレンジの場にするという想いから、精鋭2名を人選しました」(遠藤)。

遠藤が、万難を排しても「プーリングシステム」に取り組みたかったのは、グローバルバンキングの知見を蓄積したかったことに加え、トランザクションバンキングシステムに関わるシェア拡大を図りたいという想いがあったからだ。三菱総研DCSにとっても「チャレンジングな試み」(遠藤)だったのである。

最上流からのアプローチがスタート
お客様に寄り添ったシステム検討にこだわる

アサインされた若手精鋭2名のうちの一人が、当時入社8年目であった二木である。二木が遠藤から言い渡されたミッションは、「案件を獲得してほしい」の一言。というのも、新規システム開発では多くの場合、他社とのコンペティションになるのが一般的で、「案件を獲得する」ためには戦略的なアプローチが不可欠となる。「私たちが重要視したのは、システム開発の最上流からアプローチを始めること。つまり、どのようなシステムが必要なのか、そしてそれは業務でどう使われるのか。徹底したヒヤリングを進め、システムそのもの以上に、システムの使われ方、システムによる業務の最適化を検討したのです」(二木)。

もう一人の若手精鋭が、当時入社4年目の中村だった。中村は二木をサポートしつつ、具体的なシステム化要件を詰めていく作業を進めていった。「新サービスを実現するには様々な方法が存在します。そこで重要なのは、お客様本位のシステム化、すなわちお客様のためになるかどうか。お客様に寄り添い、お客様とともに検討を進めていきました」(中村)。

こうした二人の努力と最上流からのアプローチが功を奏し、三菱総研DCSはプーリング案件を受注した。こうして、プロジェクトは開発のフェーズに入っていくことになる。

プロジェクト概要

プーリングシステムとは、図のように、世界各国の銀行口座を対象に、クロスボーダーの資金移動をタイムリーに提供するというもの。資金余剰がある口座からは資金を吸い上げ、資金不足にある口座には資金が貸し出される。それにより、企業グループ全体の資金効率化が可能となる。

若手が飛躍的成長を遂げたプロジェクト
自分たちで道を切り拓く意志と覚悟

案件受注へのアクションから約1年、ついに開発はスタートした。このプロジェクトで二木は、初めてPM(プロジェクトマネージャー)に、中村はリーダーのポジションに就いた。二木がお客様との折衝や全体のマネジメントに関わる中、開発の現場を指揮したのが中村だった。「機能要件の落とし込みから設計にかけての難易度は非常に高いものがありました。各国の決済システムの仕様を十分に考慮し、世界各国の拠点とコミュニケーションを取る必要もあったのです。加えて実際の開発現場では、細々とした課題が噴出。入社早々に参画した大型案件で学んだ、進捗管理や品質管理、課題管理等のプロジェクト遂行ノウハウをフルに活用しました」(中村)。

こうして開発着手から約1年3ヶ月後、プーリングシステムは世界に向けてリリースされた。以後、障害発生は一切なく、お客様であるメガバンクにとって、企業に向けた強力な戦略商品の一つになっている。初めてのPMを無事にやり遂げた二木は、今回のプロジェクトは自分にとってターニングポイントになったと言う。「成長する時間であったことはもちろんですが、技術者としても社会人としても、目線が上がり視野が広がったと感じています。主体的に自分たちで道を切り拓いていく自覚が芽生えたと感じています」(二木)。そう語る二木は、今まで蓄積したノウハウを武器に、現在は新たに公共金融案件の獲得を目指すなど、新規ビジネスの拡大に臨んでいる。 中村は、「多くのことを学び吸収できたプロジェクトでした。その知見が、現在担当している開発案件にも活かされています。今後も、新しいことに果敢に挑戦していきたい。その意志と覚悟を今回のプロジェクトで得たと感じています」と語る。

遠藤は今回のプロジェクトを振り返って、最も印象的だったのが、重要案件を自分の決断で若手に託したことだったと言う。「若手でもやればできるのだと、このプロジェクトが完遂したときに実感したことを今でも覚えています。今後も、若手にどんどんチャレンジさせ、自分たちで道を切り拓くことができる社員を育てていきたいと思っています」(遠藤)。 今回のプーリングシステムの開発は、同社のグローバルバンキング事業の中で新たな可能性を切り拓いたと同時に、若手の成長の起爆剤となるプロジェクトでもあった。

PROFILE

遠藤

金融事業本部 部店長
1992年入社
情報処理科卒

二木

金融事業本部
2005年入社
理学部物理学科卒

中村

金融事業本部
2009年入社
文学部史学科卒

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