コラム
「パワハラで免職は「適法」 福岡の消防職員、敗訴確定」
「育介法・柔軟な働き方措置 意見徴収不要との誤解目立つ」等、
人事労務関連レポート2026年1月号
2026年1月
パワーハラスメントを理由とした免職処分の適法性に関する判例や、育児・介護休業法における柔軟な働き方措置をめぐる誤解など、最新の人事労務トピックについて解説する。
◆トピックス
- パワハラで免職は「適法」 福岡の消防職員、敗訴確定
- 育介法・柔軟な働き方措置 意見徴収不要との誤解目立つ
- カスハラ・セクハラ対策26年10月義務化 対応指針案、警察通報も
- 育児休業等給付専用のコールセンターが設置されました
- 精神障害者の雇用率算定 引き続き「手帳所持者のみ」厚生労働省が論点示す
パワハラで免職は「適法」 福岡の消防職員、敗訴確定
福岡県糸島市の消防本部で訓練中に部下にパワーハラスメントをしたとして、懲戒免職と停職の処分を受けた職員2人が、処分取り消しなどを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(石兼公博裁判長)は2日、処分は重すぎて違法だとした一、二審判決を覆し、適法との判断を示しました。職員側の敗訴が確定しました。裁判官五人全員一致の結論でした。
市は2017年3月、鉄棒に掛けたロープで体を縛って懸垂させ、力尽きた後も数分間宙づりにしたなど、複数のパワハラ行為などが確認されたとして、予防課予防係長(当時)を懲戒免職、警防課主任(同)を停職6カ月としました。
行為の累積性と継続性を重視
最高裁は控訴審の判断を完全に否定し、まったく異なる評価基準を示しました。最高裁が最も重視したのは、行為の累積性と継続性でした。13年間という異常に長期間にわたって、10人以上という多数の被害者に対し、多数回にわたって執拗に繰り返されたパワーハラスメントは、個々の行為の評価を超えて、全体として「極めて重い」非違行為であると断じました。
さらに最高裁は、これらの行為が「職場内における優位性を背景として、極めて不適切な言動を繰り返した」ものであり、部下に対する「嫌悪、苛立ち及び悪感情を主な動機」としたものであって、酌むべき事情は皆無であると厳しく評価しました。
どのような職場であっても、継続的なハラスメントが組織に与える悪影響は深刻であり、それに応じた厳しい処分が科される可能性があるということです。
育介法・柔軟な働き方措置 意見徴収不要との誤解目立つ
2025年10月施行の改正育児・介護休業法では、事業主に対して「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置」として、「始業時間の変更」「短時間勤務制度」などの5つから2つ以上の措置を選択して講ずることを求めています。事業主が講ずる措置を選択する際には、過半数労働組合、ない場合は過半数代表者の意見聴取の機会を設ける必要があります。
| 選択して講ずべき措置 (※注:②と④は、原則時間単位で取得可とする必要があります) |
各選択肢の詳細 |
|---|---|
| ①始業時刻等の変更 |
|
| ②テレワーク等(10日以上/月) | 一日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用できるもの |
| ③保育施設の設置運営等 | 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与をするもの(ベビーシッターの手配および費用負担など) |
| ④就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年) | 一日の所定労働時間を変更せず、年に10日以上取得できるもの |
| ⑤短時間勤務制度 | 一日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもの |
静岡労働局がまとめた2024年度の雇用均等等関係法令の施行状況をみると、育介法関連の相談件数は2,220件にのぼり、対前年比24.2%増となりました。改正を控え、相談件数が増加したとみられます。
同労働局によると、企業が改正法の施行前から改正後の基準を満たす措置を社内規定において整備していた場合、意見聴取は不要との認識に基づく相談が多く寄せられているということです。実際には、すでに実施している措置を改正法で規定される措置とするか否かについて、意見聴取を行う必要があります。10月以降は、意見聴取を行っていなかったとして是正指導を実施したケースもあり、警戒を強めています。
同労働局は意見聴取を行っていない企業が少なくないとみて、同法に基づく報告徴収を強化する方針としています。具体的には、企業に対して改正内容を網羅した自主点検票を配布、点検結果を回収します。「意見聴取の実施のほか、4月施行の介護離職防止のための雇用環境整備に関する違反も多く、その背景には改正内容を知らないケースもみられた」として、周知に主眼を置きつつ、法違反の疑いがあれば報告徴収の対象とすることとしています。
法改正の内容につきましては、社労士コラム9月号にも掲載しております。
詳細につきましては、こちらをご参照ください。
カスハラ・セクハラ対策26年10月義務化 対応指針案、警察通報も
顧客らが理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)から労働者を保護するため、すべての企業や自治体に対策を義務付ける関連法を2026年10月1日に施行する方針を、厚生労働省が明らかにしました。カスハラに該当し得る事例を明記し、警察への通報など対応方法を盛り込んだ指針案も示されました。
指針案では顧客のほか取引先、施設の利用者や家族、近隣住民も加害者になり得るとし、具体例として(1)性的な要求(2)契約金額の著しい減額の要求(3)ものを投げつける、唾を吐きかける(4)SNSへの悪評の投稿をほのめかして脅す(5)無断で撮影(6)土下座を強要する(7)必要のない質問を執拗に繰り返す(8)長時間の居座りや電話での拘束、などを挙げました。
対応方法としては、可能な限り労働者を一人で対応させず、労働者は管理監督者に直ちに報告し指示を仰ぐことなどを示しました。顧客とのやり取りを録音、録画し、暴行や脅迫など犯罪に該当し得る言動があれば、警察への通報も求めました。加害者に対する警告文の発出や、出入り禁止の措置も「効果的」としました。対応が不十分であれば国が是正を指導、勧告し、従わない場合は公表することになります。
セクハラの防止策も同様に義務化されます。(採用面接を受ける学生やインターン参加者なども対象)企業や自治体は指針を参考に対策を検討する必要があります。セクハラ防止の指針案では、加害社員を懲戒処分とする社内規定を設けるなど周知・啓発に取り組むように促します。
育児休業等給付専用のコールセンターが設置されました
2025年11月17日から、育児休業等給付金専用のコールセンターが設置されました。育児休業等給付に関する制度内容や申請手続き、電子申請の処理状況の目安に関するお問い合わせは、コールセンターをご活用ください。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/002464337.pdf
●育児休業等給付コールセンター(0570-200-406)
受付時間:平日8:30~17:15(土日祝日、12月29日~1月3日を除く)
対象の給付金:育児休業給付金、出生時育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金
精神障害者の雇用率算定 引き続き「手帳所持者のみ」厚生労働省が論点示す
厚生労働省の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」(座長=山川隆一明治大学教授)は10月29日、雇用率制度の対象になる精神障害者の範囲について議論しました。
精神障害者保健福祉手帳を所持していない精神・発達障害者を加えるかどうかについて、事務局は、手帳の対象は精神障害、発達障害の範囲を網羅しているうえ、申請時に日常生活における制限の状態を確認していることなどから、手帳以外の基準を用いて判断する必要性・合理性は乏しいとして、手帳の所持者に限定する現行制度の維持を提案しました。
また、症状の改善などにより手帳を更新できなかった場合について、労働者が引き続き同一企業に雇用されており、今後もその見込みであると判断されるケースにおいて、有効期間満了後の一定期間(新規採用のための業務切り出しや採用活動に必要な期間を考慮し、1年程度)、雇用率の対象に含める案も示し、いずれも賛同する意見があがりました。