コラム
「労働環境を巡る世界の動き」「衛生基準規則改正」など 人事労務関連レポート2022年1月号
2022 年1 月12 日
三菱総研DCS、社労士事務所による人事労務市場の「今」を解説。今日から業務に役立つ情報から今後の法改正などの情報までトータルでお届けいたします。
◆トピックス
- 「労働環境」を巡る世界の動き
- 事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則が一部改正されました
- 令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます
- 令和4年1月1日から「眼の障害」の障害認定基準が一部改正されます
- 改正・育児介護休業法は、令和4年4月1日から3段階で施行されます
- 社会保険適用の拡大について
- 令和4年1月以降の雇用調整助成金の特例措置等について
「労働環境」を巡る世界の動き
- 「SDGs」「ESG」「ビジネスと人権」と「ISO30414」について -
ISO30414について
1.指標の特徴
前回のレポートでご案内した11項目と58の指標の主なものは、下段の別表の通りです。
11項目の内容の全ては「人事」が所管しているもので、なじみのある項目ばかりといえます。3の多様性(ダイバーシティ)関連や6の安全・健康・福利厚生の労災関係の指標、7の生産性、8の採用・異動・離職の離職率等の指標、11の労働力の指標等は日常取り扱っている人事情報からとりまとめができます。
しかしながら指標をとりまとめるためには、ISOの他のチームでまとめている内容を参照することが求められたりして、本ガイドラインのみでとりまとめが完結しません。例えば5の指標の採用コストではISO/TS30467を参照することが求められたり、7の組織の安全衛生及び福利厚生で取りまとめるにはISO45001(労働安全衛生マネジメントシステムに関する規格)を参照し適切な記述方法をとる必要があるとされています。(ISO45001および附帯する「ISO45003:職場における心理社会的リスクの管理ガイドライン)については後程詳細します。)
また4のリーダーシップに対する信頼や5の組織文化のエンゲージメント/満足度/コミットメントのとりまとめには、従業員に対する意識調査を行ったうえで指数化するなど、一定のプロセスが必要なものがあります。このようなことのために全事項を網羅してまとめるためには時間と労力が必要といえます。
ガイドラインの全体像

次号、ISO30414の現時点での限界と課題について述べることにします。
事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則が一部改正されました
事務所衛生基準規則は、1972年に労働安全衛生法への体系に移り、以降約50年経っているにもかかわらず、規則の改正については2004年に空気環境基準の追加や、作業環境測定の頻度の変更の見直しが1回行われた程度でした。
その間、現在に至るまで、女性活躍の推進、高年齢労働者への対応、障害のある労働者への配慮及び働き方改革といった社会状況の変化がありそこで浮かび上がった課題を踏まえて改正に向けての検討が行われ、ようやく事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令が令和3年12月1日に公布され、一部の規定を除き、同日から施行されました。
主な項目 | 見直しのポイント |
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照度 【事務所のみ】 (R4.12.1施行) |
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便所 |
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シャワ―設備等 |
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休憩の設備 |
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休憩室・休養所 |
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作業環境測定 【事務所のみ】 |
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救急用具の内容 【事務所以外】 |
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令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます
治療と仕事の両立の観点から、より柔軟な所得保障ができるよう健康保険法等が改正されました。
改正ポイント
- 同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象となります。
- 支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても繰り越して支給可能になります。
※令和3年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金(令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金)が対象となります。
令和4年1月1日から「眼の障害」の障害認定基準が一部改正されます
障害年金(国年・厚年)の障害認定基準の改正内容は以下のとおりです。
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視力、視野の障害認定基準の改正
視力の障害認定基準 - 「両眼の視力の和」から「良い方の眼の視力」による障害認定基準に変更します。
視野の障害認定基準 - これまでのゴールドマン型視野計に基づく障害認定基準に加えて、現在広く普及している自動視野計に基づく障害認定基準を創設します。
- 求心性視野狭窄や輪状暗点といった症状による限定をやめて、測定数値により障害等級を認定するよう変更します。
- これまでの障害等級(2級・障害手当金)に加え、1級・3級の規定を追加します。
- 診断書様式:視力・視野の障害認定基準の改正に伴い、診断書様式を改正します。
- 眼の障害で2級または3級の障害年金を受給されている方については、「眼の障害」の障害認定基準の改正により障害等級が上がり、障害年金額が増額となる可能性があります。障害認定基準の改正に伴って、障害等級が上がり、障害年金額の増額を希望される場合は、令和4年1月以降に額改定請求の手続きを行ってください。なお、今回の改正によって、障害等級が下がることはありません。
改正・育児介護休業法は、令和4年4月1日から3段階で施行されます
育児介護休業法の改正概要と施行時期
1.令和4年4月1日施行 (産後パパ育休に関しては令和4年10月1日から対象となります)

2.令和4年10月1日以降の育児休業の概要

※1 雇用関係の整備などについて、今回の改正で義務づけられる内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1ヵ月前までとすることができる。
※2 具体的な手続きの流れは、以下①~④のとおり。
①労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申し出
②事業主は労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示。候補日等がない場合はその旨。
③労働者が同意
④事業主が通知
なお、就業可能日等には上限がある。
- 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
- 休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満
3.育児休業取得状況の公表の義務化(令和5年4月1日施行)
従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。
なお、上記のうち[有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和]、[産後パパ育休(出生時育児休業)の創設]、[育児休業の分割取得]については就業規則の見直しが必要になります。
また、厚生労働省ホームページに育児・介護休業等に関する規則の規定例も公表されていますのでご参照ください。
社会保険適用の拡大について
2022年10月からの短時間労働者に対する「社会保険の適用拡大」について、主な改正点のポイントをまとめております。
主な改正ポイント
・現行では、いわゆる4分の3基準を満たさない従業員の社会保険適用の拡大要件は、①従業員数501名以上の特定適用事業所で、②1週間の所定労働時間が20時間以上、月額賃金8万8千円(年収106万円)以上で1年以上の雇用見込みのある学生ではない従業員となっておりましたが、2022年10月から段階的に、事業所規模が101名以上(2022年10月から)、51名以上(2024年10月から)と要件が拡大されます。
また、雇用見込みについても、2か月を超える雇用見込みのある従業員は加入対象となります。
詳細については、下記URLにも記載されておりますので、ご参照ください。
■厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/jigyonushi/
令和4年1月以降の雇用調整助成金の特例措置等について
新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の特例措置について、令和4年1月~3月の助成内容が政府の方針として表明されました。施行にあたっては厚生労働省令の改正等が必要であり、現時点での予定となります。なお、令和4年4月以降の取扱いについては、「経済財政運営と改革の基本方針2021(令和3年6月18日閣議決定)」に沿って、雇用情勢を見極めながら具体的な助成内容を検討の上、2月末までに改めて発表される予定です。下記URLに助成内容等も含め詳細が記載されておりますので、ご参照ください。
■厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/r401cohotokurei_00001.html