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コラム

職務に応じた処遇反映を高める方法~3つの選択肢~

2026年10月

河合 桃子(かわい ももこ)写真

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部組織人事ビジネスユニット

HR第1部河合 桃子(かわい ももこ)

新卒で三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社に入社し、主に中堅・中小企業を中心とした人材マネジメント戦略策定や基幹人事制度の策定支援に従事。

1.日本企業において、職務に応じた処遇は進んでいくか

 コロナ禍以降、大企業を中心にジョブ型人事制度の導入が進んでいる。加えて、2024年に公表されたジョブ型人事指針もその流れを後押しするきっかけとなった。「ジョブ型人事制度」とは、簡単に言うと「人」ではなく「職務」基準で処遇を決定するという思想に基づく人事制度である。しかし、いざグローバル基準のジョブ型人事制度を導入するとなると、職務記述書の整理や職務給の導入など相当の労力がかかるうえ、職務ごとに処遇が変わることにより、組織都合で異動・ローテーションを進めづらくなる。このため、一般的な日本企業においてグローバル基準のジョブ型を全面的に適用することには一定のハードルがあるといえる。
 とはいえ、ジョブ型人事制度の導入が難しいからといって、本人の職務に応じた処遇が不可能というわけではない。実際に弊社が日本企業をご支援する中でも、「現在は能力を基準に、実質年功的に賃金が決定しているが、より本人が担っている仕事や貢献度に応じた処遇の反映度合いを高めたい。どのような方法があるか」との声が多く聞かれる。同じような悩みを抱えている企業に対する処方箋として、本コラムでは、職務に応じた処遇の反映度合いを高める方法を提示したい。なお今回は、組織内でも特に成果責任が問われるために年功賃金がフィットしづらい、役付管理職(部下を有する管理職)の処遇方法に話を限定して進めていきたい。

2.現在担っている職務に応じた処遇の方法

 ここでは、現在職能資格制度を導入している企業が、管理職の処遇に対し、職務に応じた反映度合いを高めたいという場合に、どのような方法がありうるかを紹介する。パターン1が最も変革度合いの大きい方法であり、パターン2、パターン3と進むにつれて現状維持の色合いが強くなる。

パターン1. 各ポジションと対応した役割等級(グレード)を設定する

 これは、同一階層の役職内でも処遇差をつけるパターンである。例えば、「A部の部長」と「B部の部長」を比較したときに、A部の方が管掌範囲も広く、高い責任を課されている場合、B部よりA部の部長の処遇が高くなるよう設計する。しかし、当パターンではグローバル基準のジョブ型人事制度のように、会社に存在する全ての職務に対して対応グレードを設定するというよりは、管理職ポジションに限定し、役割の大きさに応じて等級(グレード)を分けることを想定している。
 ジョブ型の思想では、基本的にジョブの大きさはその職務の「難易度」と「責任の大きさ(職責)」で決定するとされる。ジョブ型の思想を取り入れて役割の大きさを測る基準の一例として、「マネジメント人数」や「対象職種の範囲」、「直面する問題の新規性」、「業績への関与度」等が考えられる。もっとも、ポジションごとに等級(グレード)の差を設け、社員の納得感を得られる形で運用するためには、慎重な設計が求められる。制度の納得度を高めるためには、各基準の定義や尺度を明確にし、処遇の設定根拠を分かりやすく説明できる状態にしておくことが肝要である。

パターン2. 各役職階層と対応した役割等級(グレード)を設定する

 例えば最上位等級が部門長水準、中位等級が部長水準、下位等級が課長水準という形で、各等級が役職階層と1:1に対応した設計である。ここでは、役職が等級と連動するため、従来のような「○○要件を満たしたら昇格」という考え方ではなく、役職のアサインに応じて昇降格がなされる。また、各等級(=役職)に対する期待役割や職務の整理も併せて必要となる。等級体系は変わらないように見えるかもしれないが、これまでの職能資格とは考え方が異なることに注意が必要である。
 もし現在、等級と役職が連動していない場合、本来職責の異なる役職(例えば部長と課長)に同水準の基本給を支給していることを意味する。当パターンを導入するだけでも、現在の職務に応じた処遇に一歩近づくことになる。

パターン3. 現状の等級体系を維持しつつ、手当に差をつける

 これは現在の等級体系を維持しつつ、処遇面で差をつける方法である。
 例えば同じ部長職の中で大規模部署の部長・小規模部署の部長の2つに区分し、それぞれ異なる役職手当額を適用することで、ポジションごとの難易度や職責を処遇に反映させることが可能になる。(パターン1の考えを役職手当のみに反映するイメージ)
 この方法であれば、重い職責を担っている役職者に給与面では報いつつ、能力基準の従来型の等級格付けを維持できる。そのため、改定に伴う社員への影響は小さいといえるだろう。

【各パターンの設計イメージと特徴】

各パターンの設計イメージと特徴を比較した図

おわりに

 ここまで、管理職の人材に対して職務の差に応じた処遇を実現する方法をいくつか紹介した。一口に「仕事内容や職責を処遇に反映する」といっても、様々なバリエーションがありうることをご理解頂けたのではないかと思う。人事制度にはある程度一般的な型はありつつも、白黒で割り切れるものではなく、各社の状況に応じた様々な設計の在り方が存在する。「自社は何を実現したいのか」「理想をどこまで追求するのか」「他の人材マネジメントとの整合はどうか」という点に立ち返り、自社に合った仕組みを柔軟かつ丁寧に設計していくことが重要である。

以上

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部
組織人事ビジネスユニット

HR第1部河合 桃子(かわい ももこ)

  • 経歴

    新卒で三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社に入社し、主に中堅・中小企業を中心とした人材マネジメント戦略策定や基幹人事制度の策定支援に従事。

  • プロジェクト実績

    基幹人事制度設計・導入支援(製造業、卸売業等)
    建設業における人的資本経営推進支援
    電力小売業における人材マネジメント戦略立案支援 等

  • 専門領域

    組織人事領域全般。特に基幹人事制度設計