コラム
社員のキャリア形成支援を通じた離職防止
2026年1月

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部組織人事ビジネスユニット
HR第4部コンサルタント 平澤 允
階層別人材育成や人材育成体系の構築など、主に組織人事領域のプロジェクトに参画している。
Ⅰ.社員のキャリア形成支援の重要性
近年、中堅企業を中心に、採用難の中で採用・育成した若手・中堅社員が離職してしまう、というケースが増えている。離職理由として、業務負荷の高さやワークライフバランスの欠如が挙げられることもあるが、実際にご支援先企業で調査を実施すると、社員が将来のキャリア形成に不安を感じている場合も多い。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査(※)によると、離職理由の上位には、「人間関係」「業務内容」「キャリアアップ」が挙げられている。特に、「人間関係」「業務内容」については、勤続年数が1年以内の新卒就業者と比べて、5年を超える新卒就業者では減少する一方、「キャリアアップ」が理由となる割合は増加する傾向にある。人間関係のトラブルや業務内容への不満だけでなく、社員の成長やキャリア形成の支援が、人材確保・定着を目指す企業にとって重要なテーマの1つとなっている。
※出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況」(2025年)
jil.go.jp/institute/research/2025/documents/250.pdf
Ⅱ.成長支援・キャリア形成支援の施策とステップ
社員に対するキャリア形成支援としては、「どのようなステップで成長を支援していくのか、その支援施策を整理したもの」(以下、育成体系)を構築し、社員に示すことが効果的だ。育成体系が明示されることで、社員はこの会社で自らがどのように成長していくのか、イメージを描きやすくなる。本章では、育成体系構築に向けたステップを紹介する。
① 会社が求める人物像を決める
まず、会社として「どんな人材に成長してほしいか」を明確にする必要がある。例えば、「お客様の課題を自分で考えて解決できる人」や、「チームで協力できる人」など、職種や部門にかかわらず会社全体で共通する人物像を定める。そのために、会社のミッション・ビジョンの実現や経営戦略の実行に向けて、社員に期待する行動や能力(知識・スキル)を階層ごとに明らかにし、その行動や能力に共通する要素を抽出する。さらに、職種や部門(営業や事務など)に必要な行動・能力も整理する。
② 現在の状況を把握する
次に、社内の現状を把握する。具体的には、どのような研修やOJT(職場での実地指導)が行われているかの確認、役員や部長層を対象としたインタビューや、社員を対象としたアンケートを行い、現時点で社員がどのような能力を持っているかを把握する。また、職種や部門ごとに、業務遂行においてどのような行動が求められているのか、その行動のために必要とされている能力は、階層ごとにどのようなものかを明らかにする。
③ 課題を明確にし、育成体系に落とし込む
求める人物像と現状の社員の状況を比較し、階層ごとに「どのような力を伸ばす必要があるか」を整理する。例えば、「若手社員は、お客様とのコミュニケーション力強化のための研修を受講する」「中堅社員は、アクションラーニングを織り込んだ実践的研修にて、リーダーシップ発揮を体得する」など、具体的な1年間の育成計画を立てる。職種・部門ごとにも同様に、「基本的な業務手順はOJTで習得する」「専門的業務知識は社内研修会にて学習する」など、それぞれの階層に求める行動・能力の習得の仕方を整理する。
④ 施策を実施し、効果を確認する
計画した研修やOJTを実施した後、研修受講アンケートや上司による日々の行動観察・面談で、「どれだけ成長できたか」「課題が解決できたか」を確認する。半期ごとや年度ごとなど、評価や振り返りを行うタイミングにおいて、能力的な成長が不十分・行動変容が見られないなど、効果が十分でなければ内容を見直して改善する。
ここまで、会社全体の育成体系構築のステップについて紹介したが、効果的に運用するためには、上司が部下と定期的に面談し、部下への期待を踏まえて、会社の方針や育成施策を確実に伝えることも重要である。社員一人ひとりが、「自分には今後どのような行動・能力が期待されているのか、そのために会社はどのような成長機会を用意しているのか」を理解できるようサポートすることで、育成施策の効果はさらに高まる。
社員が自身の成長イメージを描けるようにするため、会社として期待する人物像と、その成長機会を育成施策やキャリアパスとして示すことが、若手・中堅社員の離職防止の一助となるだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部
組織人事ビジネスユニット
HR第4部コンサルタント 平澤 允(ひらさわ まこと)
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経歴
大手システムインテグレーターのソリューション営業、公益財団の人材育成支援部門での勤務を経て三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。
現職では階層別人材育成や人材育成体系の構築など、主に組織人事領域のプロジェクトに参画。 -
プロジェクト実績
階層別(部長職・課長職・リーダークラス・中堅社員)研修
テーマ別(論理的思考力、営業スキル、財務分析など)研修
次世代幹部育成プログラム
人材育成体系構築支援
営業部門の生産性向上プロジェクトなど -
専門領域
人材育成支援、人材育成体系構築、マーケティング・営業活動の生産性向上