コラム
「労働施策総合推進法改正による措置(義務・努力義務)」
「65歳超雇用推進助成金」支給要領の一部改正」等、
人事労務関連レポート2026年6月号
2026年6月
近年の法改正や調査結果を踏まえ、治療と就業の両立支援やハラスメント対策の強化等、企業が取り組むべき課題と方向性について解説する。
◆トピックス
労働施策総合推進法改正による措置(義務・努力義務)
少子高齢化の進行により労働力人口が減少し、企業にとっては人材の確保・定着が重要な課題となっています。
病気を抱える労働者の中には、職場の理解や支援体制が十分でなく、就業をあきらめてしまうケースが少なくありません。今後、高齢者の就労の増加等を背景に、どの職場でも、病気を治療しながら仕事をする労働者は増えていくと予想され、従業員が安心して働き続けられる職場環境を整えることは、人手不足が深刻化する中で企業にとっても重要な経営課題となっています。
また、職場におけるハラスメント問題も深刻化しています。従来から問題とされてきたパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに加え、顧客や取引先等からの暴言や理不尽な要求といったカスタマーハラスメントが社会問題となり、その相談も増加しています。こうしたハラスメントは労働者の心身に大きな負担を与え、離職の原因にもつながりかねませんが、従来の法制度は主に職場内部のハラスメントを対象としており、顧客等第三者からのハラスメントに対する規制は十分ではありませんでした。
このような状況を背景として、労働者が安心して働き続けられる環境の整備を図る必要があるとされ、政府は制度の見直しを進め、治療と就業の両立支援の推進とともに、ハラスメント対策の強化等を目的として、令和7年6月に労働施策総合推進法等の一部改正を行いました。
この改正により、疾病等を抱える労働者が治療と就業を両立できるよう支援するための措置を講じる努力義務(令和8年4月)が新たに設けられるとともに、事業主にはカスタマーハラスメントや求職者等へのセクシュアルハラスメントの防止措置を講じる義務(令和8年10月)が課されました。これらの措置は一体として、職場における健康リスクに対応する仕組みを構成しています。ハラスメント対策が労働者の心身の健康悪化を未然に防ぐ「予防的機能」を担うのに対し、両立支援は疾病等が生じた後に就業継続を支える「対応的機能」を担い、両者は相互に補完しながら、労働者の就業環境の改善と雇用の安定を図る制度として整備されています。ハラスメントのない職場環境の実現と、多様な人材が継続して働くことができる社会の構築が目指されています。
【令和8年10月適用】
| カスハラの防止のために講ずべき措置(義務) | 求職者等セクハラの防止のために講ずべき措置(義務) | |
|---|---|---|
| 事業主の方針等の明確化及びその周知/啓発 |
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| 相談体制の整備 |
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| 事後の迅速かつ適切な対応 |
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【令和8年4月適用】
| 治療と就業を両立できるよう支援するための措置(努力義務) | |
|---|---|
| 事業主の方針表明 |
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| 研修等を通じた意識啓発 |
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| 相談窓口の明確化・社内の支援体制の整備 |
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| 社内制度(休暇制度・勤務制度)の整備 |
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■詳細はこちらをご覧ください。
令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の調査結果
厚生労働省より「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の調査結果が公表されました。
この調査は、令和7年に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」等に基づき、働き方の実態とニーズを把握することを目的とした調査です。
労働者3,000人の回答によると、労働時間をどのようにしたいかとの問いに対し、労働時間はこのままでよいは約59.5%、労働時間を減らしたいは約30.0%、労働時間を増やしたいは約10.5%でした。
増やしたいと回答した約10.5%のうち、月80時間の上限を超えて残業することを希望したのは、0.5%にとどまり、限定的でした。労働時間を増やしたいと希望した理由は、たくさん稼ぎたいから41.6%、自分のペースで仕事をしたいからが19.7%、残業代がないと家計が厳しいからが15.6%でした。
また、時間外労働等の時間として1か月当たり何時間程度が妥当だと考えるかについては、20時間以下が65.6%、20時間超45時間以下が27.4%で45時間以下を希望する労働者が計93%となり、45時間超80時間以下が4.7%、80時間超が2.3%でした。
一方、企業ヒアリング(327社)も行われ、現在の労働時間に対する企業の希望は、現状のままが良い201社、増やしたい53社、減らしたい73社でした。現状のままがよい理由としては、業務量との関係や労働者の健康確保・ワークライフバランス等が挙げられ、増やしたいとした理由としては、業務の性質や受注の確保、労働者の希望等が挙げられ、減らしたい理由としては、人材確保・定着、人件費の抑制等が挙げられました。
今回の結果も踏まえ、労働市場改革分科会や労働政策審議会において、運用・制度の両面から、労働時間規制の検討がなされる見込みです。
■詳細はこちらをご覧ください。
厚生労働省 「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の調査結果を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073981_00060.html
「65歳超雇用推進助成金」支給要領の一部改正について
厚生労働省の雇用関係助成金パンフレット・リーフレット等が令和8年4月8日より順次更新・公開され、支給要領も更新されました。
今回、「65歳超雇用推進助成金」が支給要領の一部改正により制度内容が拡充されました。本助成金制度は、65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止または66歳以上への継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度のいずれかの措置を実施した事業主に対して助成を行い、高年齢者の雇用の推進を図ることを目的としています。
■主な改正ポイント
| 改正項目 | 改正内容 |
|---|---|
| 受給額の変更 | 15万円~240万円へ拡充 |
| 受給可能回数 | 「1事業所1回限り」を廃止、複数回可能 |
| 継続雇用制度の導入(希望者全員を対象者)の基準追加 | 一定基準の該当者を対象 |
| 専門家への委託要件の廃止 | 外部専門家への委託不要 |
■65歳超雇用推進助成金 3つのコース
| コース名 | 主な内容 |
|---|---|
| 65歳超継続雇用促進コース | 定年引上げ・定年廃止・継続雇用制度導入 |
| 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース | 賃金制度導入等の雇用環境整備 |
| 高年齢者無期雇用転換コース | 50歳以上有期契約労働者の無期転換 |
■詳細はこちらをご覧ください。
厚生労働省 雇用関係助成金一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00057.html
65歳超雇用推進助成金のご案内(パンフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/001233792.pdf
雇用関係助成金全体のパンフレット(簡易版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf
■留意事項
所定の期間において、高齢者雇用安定法第8条または第9条第1項の規定と異なる定めをしていないことや、同法第10条の3第2項に基づく勧告を受けていない事業主であること等が必要です。また、助成金の審査には支給申請書の受理から3か月程度時間を要します。
