社労士

コラム

「同一労働同一賃金ガイドライン」
「女性の健康管理支援実施マニュアル」等、
人事労務関連レポート2026年3月号

2026年3月

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインの見直し(案)、産休・育休中の公的給付金や社会保険料免除額の試算ツール公開、女性特有の健康課題への対応などについて解説する。

トピックス

同一労働同一賃金ガイドライン見直し(案)が公表されました

 厚生労働省は、労働政策審議会同一労働同一賃金部会からの報告を受け、非正規労働者の待遇を改善するために、同一労働同一賃金ガイドラインや関係省令を改正し、今年10月に施行する方針であることを明らかにしました。働き方改革関連法施行から5年が経過し、非正規雇用労働者の待遇改善の取り組みが進められていますが、依然として賃金格差がある状況であり、更なる取り組みが求められることとなる見込みです。
 改正案では働き方改革関連法施行後の裁判例の蓄積を踏まえて、退職手当、家族手当、住宅手当などについての原則的な考え方が追加されました。

<同一労働同一賃金ガイドライン見直し(案)より抜粋>

【退職手当】メトロコマース事件最高裁判決を踏まえて追記
同判決で言及された退職手当の性質・目的等についてを留意すべき事項として記載

【家族手当】日本郵便(大阪)事件最高裁判決を踏まえて追記
労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない。

【住宅手当】ハマキョウレックス事件最高裁判決等を踏まえて追記
住宅手当であって転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない。

 また、労働者に対する待遇に関する説明義務についても改善を図る予定で、雇入れ時の労働条件明示事項に待遇差の内容、理由や待遇を決定するに当たって考慮した事項の説明を求めることができる旨が追加され、待遇差に関する説明方法については、「資料を活用し、口頭により説明する方法」、又は「説明すべき事項を全て記載したパートタイム・有期雇用労働者及び派遣労働者が容易に理解できる内容の資料を交付する等の方法」のいずれかとすることなどが指針で示される予定となっています。詳しくは以下をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001642072.pdf

産休・育休中等の公的給付金、社会保険料免除額を試算できるツールが公開されました

 厚生労働省は、出産時や育児休業中に受け取れる給付金などの額をイメージしていただくために、出産育児一時金や育児休業給付金等の金額を試算できるツールを公開しました。
 このツールはママの場合(出産する場合)とパパの場合両方の出産や育児に関する休業を取得した場合に、通常受け取れる給付金等の金額と要件を満たした場合に免除される社会保険料の金額を、各々の条件を入力した上で試算することができるようになっています。
 各制度には要件(被保険者資格、勤務状況、休業期間等)があり、要件を満たさない場合には対象にならないこともありますが、出産時や育児休業中の保障の概算額を知ることができ、休業を取得予定の従業員にお伝え頂くツールとして役に立つものと思われます。
https://shussan.ikukyu-simu.mhlw.go.jp/

女性特有の健康課題への対応 厚生労働省が実施マニュアルを公表

 令和8年1月、厚生労働省は「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」を作成しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001634193.pdf

 本マニュアルは、「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」の報告書において、一般健康診断問診票に女性特有の健康課題(例:月経困難症、月経前症候群、更年期障害等)に関する質問を追加することが適当とされたことを受け、厚生労働省において、女性特有の健康課題を抱える個々の労働者と事業者を繋ぐ観点から、望ましい対応をとりまとめたものです。
 女性の健康問診は、女性特有の健康課題が業務によるものかどうか、その関係性が明らかにされていない中にあって、事業者健診の機会を活用し、労働者本人への気づきを促すことを目的とするものであり、任意に行われるものです。
 女性の健康問診の主体は健康診断実施機関(以下、「健診機関」という。)であり、事業者ではありません。また、女性の健康問診の結果は、健診機関から事業者に直接提供されません。そのため、労働者からの申し出がない限り、女性の健康問診の結果やその結果に基づく専門医の受診状況を、事業者が把握することはありません。
 しかし、健診機関における女性の健康問診によらず、労働者は、事業者に対して健康課題に関する相談をすることは可能であり、事業者には、労働者の健康課題に応じた適切な配慮が望まれます。
 本マニュアルにおいては、労働者を支援するための準備として、①基本方針の表明、②衛生委員会等による労使の十分な話し合い、③管理職及び全従業員に向けた研修の実施、④相談体制の整備、⑤支援制度の整備を挙げています。
 また、労働者からの相談対応や、健診機関との連携、個別の労働者に対する配慮の具体例も示されています。
 経済産業省が公表した、「女性特有の健康課題による経済損失の試算(令和6年)」によると、女性特有の健康課題による経済損失は社会全体で年間約3.4兆円と推計されており、労働生産性の低下や自分の望むキャリアを諦める女性がいることは、女性だけでなく企業にとっても大きな損失となっています。
 女性特有の健康課題は、個人の努力だけでは解決できないこともあり、職場の理解や、個々の状況に応じた適切な配慮が求められます。
 現在、労働力人口に占める女性の割合は45%を超えており、女性のさらなる活躍が期待される状況の中、女性の健康支援は欠かせない取り組みです。
 「働く女性の心とからだの応援サイト」では、女性の健康課題に関する、具体的な企業の取り組みについて紹介されています。ご興味がございましたら、以下をご参照下さい。
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/