社労士

コラム

「2026年施行予定の法改正」
「社会保険労務士法が改正されました」等、
人事労務関連レポート2026年2月号

2026年2月

2026年施行予定の法改正、障害者雇用状況の集計結果などについて解説する。

トピックス

2026年施行予定の法改正

 子ども・子育て政策の強化に伴い、子ども・子育て支援法の改正が今年4月から施行されます。子ども・子育て支援金は、医療保険制度ごとに保険料が決められ、高齢者や企業を含む全世代・全経済主体から拠出し、実務上、被保険者および事業主に大きな影響があります。
 2026年施行の、主な改正について必要な実務の留意点をお知らせします。

労働安全衛生法 工作物石綿事前調査者の事前調査の適用範囲拡大:特定工作物まで拡大 2026.01
高年齢の労働災害防止の推進:高年齢労働者の労災防止に必要な措置の実施を事業者の努力義務とする。 2026.04
健康保険法 子ども・子育て支援納付金の徴収開始:被用者保険の支援金率は一律0.23% 2026.04
健康保険の被扶養者認定における年収の判定方法:労働契約で定められた賃金から見込まれる年収が130万円未満であること
高額療養費上限額引上げ:所得に応じて7~38%引き上げ 2026.08
厚生年金保険法 在職老齢年金の支給停止基準額引き上げ:51万円→65万円へ引き上げ 2026.04
社会保険加入対象拡大:月額8.8万円以上の賃金要件の撤廃 2026.10
女性活躍推進法 男女間賃金差と女性管理職比率の公表義務化拡大:従業員数301人以上の企業→101人以上の企業に拡大 2026.04
障害者雇用促進法 障害者法定雇用率引き上げ:法定雇用率2.5%→2.7%対象事業主範囲40.0人以上→37.5人以上 2026.07

【子ども・子育て支援金】<施行日>2026(令和8)年4月1日
 1月15日付けで、「2026(令和8)年度における子ども・子育て支援納付金の額の算定に関してこども家庭庁長官が定める率及び額を公示する件」が公布され、被用者保険については、国が一律の支援金率を示すこととしており、0.23%と公表されました。

こども家庭庁が公表した令和8年度から令和10年度にかけての「加入者一人当たり支援金額」の見込みをまとめた表です。

障害者雇用の状況について

 2025年12月、令和7年「障害者雇用状況の集計結果」が公表されました。民間企業の雇用障害者数は70万4,610人で前年から2万7,148人(+4.0%)増加となり、22年連続で過去最高を更新しています。実雇用率は2.41%、法定雇用率達成企業の割合は46.0%でそれぞれ前年と同率でした。産業別の実雇用率では、「医療、福祉」(3.02%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(2.54%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(2.54%)、「複合サービス事業」(2.54%)が法定雇用率(2.5%)を上回っています。民間企業の法定雇用率は2021年に2.3%、2024年に2.5%と段階的に引き上げられており、今年2026年7月には2.7%となります。今後も共生社会の実現や労働力の確保に向けて、障害者雇用のさらなる促進が図られていくことになります。
 一方で、昨今のニーズの高まりとともに障害者雇用の「代行ビジネス」を巡る問題が浮上しています。具体的には、障害者を雇う企業に代わり働く場や業務を提供する代行事業者が、農園での農作業など企業の本業とは関係のない業務に従事させているケースが指摘されています。こうした状況を受けて、厚生労働省は代行事業者の運営指針を作成する方針を固め、専門知識のあるスタッフの配置・育成や、障害者の仕事が利用企業の本業に役立つよう支援することを要請する内容が議論されています。また、利用する企業に対しても、利用状況の報告を求めることが検討されているようです。引き上げられる法定雇用率達成のため代行事業者を頼る企業は今後さらに増えていくことが予想されますが、数値だけでなく、障害のある社員が長期的に活躍し、職業生活の自立につながるような雇用のあり方が問われています。

社会保険労務士法が改正されました

 2025年6月、社会保険労務士法の一部改正が成立し、公布日から順次施行されています。企業の働き方や雇用形態が多様化し、労務管理の重要性が高まる中で、社労士が果たすべき役割をより明確にすることが今回の改正の大きな狙いです。
 今回の改正では、まず今まで第1条に記載されていた目的規定が「使命」規定に変更されました。社労士は、労働・社会保険法令の円滑な実施を通じて、適切な労務管理と尊厳が守られる働きやすい環境づくりに貢献し、事業の健全な発展や労働者の福祉、社会保障の向上に寄与することが使命として求められることとなり、より積極的にその目的を果たすことが求められる存在であると定義されました。
 また、改正点として注目されるのが、労務監査社労士の業務として明記されたことです。労務監査とは、労働時間管理や社会保険の加入状況、就業規則・労働契約の内容などが法律に沿って運用されているかを確認するものです。これまでも弊社も含め多くの社労士が実務として行ってきましたが、法律上も正式に位置づけられたことで、企業としても労務リスクを早期に把握・改善する機会として活用しやすくなりました。
 さらに、社労士による裁判所での補佐人としての出頭・陳述についても規定が整備されました。あくまで弁護士と共に労務・社会保険に関する事項に限られる点に変更はありませんが、実務の明確化により企業も安心して手続を進められるようになります。加えて、「社労士」「社労士法人」などの名称保護が明文化されました。従来から「社会保険労務士」「社会保険労務士法人」という名称は禁止されていましたが、今回その表現について略称版も法的に禁止されることになりました。利用者が資格者と非資格者を誤認しないよう配慮が強化されます。
 今回の改正は、社労士の専門性と責任をより明確にし、企業における労務管理の透明性と法令遵守を後押しする内容となっています。労務監査は就業規則や労働時間制度、社会保険手続きなど、日常的な業務で「これで大丈夫かな?」と感じる部分がある場合、今一度点検を行う良いタイミングです。働き方が多様化する今、適切な労務管理が企業の信頼性向上につながることは間違いありません。

大学講師の無期転換認めず ~最高裁「雇用10年特例」初判断~

 有期雇用契約が通算5年を超えたのに無期契約に転換されず、雇い止めされたのは違法として、元大学講師の女性が大学側に地位確認などを求めた裁判が行われました。
 2013年施行の改正労働契約法にて、有期契約が通算5年を超えると労働者が希望すれば無期雇用への転換を申請できる「無期転換ルール」を定めている一方で、任期法では、大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間を5年から10年とする特例が設けられています。このため、原告の女性の労働状況が教育研究組織の職に該当するか、10年特例の適否が争点となりました。
 二審・大阪高裁判決では、女性の訴えを認め、雇止めを無効とした判決が下されましたが、上告審で、最高裁第1小法廷は、女性の無期転換を認めない判決を言い渡しました。
 最高裁が「10年特例」について判断を示したのは初めてとなります。「最終的に」訴訟の差し戻しとなった控訴審が2025年12月17日に大阪高裁で行われ、和解となりました。

「えるぼしプラス」創設予定 女性の健康支援へ新たな認定制度

 厚生労働省は、女性の職業生活における活躍推進を定めた「女性活躍推進法」に基づき、既存の「えるぼし」「プラチナえるぼし」に加えて、新たに職場での女性の健康支援に取り組む企業を認定する制度の創設を予定しています。健康支援にも積極的に取り組む企業を示す新たなマーク「えるぼしプラス(仮称)」のデザインも昨年公募されるなど、新認定制度創設に向けて着々と進行しているようです。新認定の要件としては、女性の健康上の特性に配慮した休暇制度や、半日・時間単位の年休、時差出勤、在宅勤務など柔軟な働き方を可能にする制度が求められ、また、方針の周知、健康に関する研修の実施、相談を受け付ける「女性健康配慮担当者」の選任など、組織的な取り組みが必要となります。既にえるぼしを取得されている企業の皆様は、新認定の取得もご検討ください。

2026年の助成金・補助金について

 昨年末に決定した政府の予算案をもとに、主に中小企業に向けた様々な補助金や助成金が用意されております。2026年も引き続き「賃上げ」と「設備投資」などを組み合わせた支援がさらに拡充されていく見込みです。すでに1月から申請が始まっているものもありますので、詳細をご確認のうえ是非ご活用ください。

賃金引上げが要件や特例になる補助金>
 「中小企業成長加速化補助金」は、売上高100億円規模を目指す企業による大胆な投資を支援するための補助金ですが、こちらの補助上限は最大で5億円にもなります。この補助金を使うには、3年後までに従業員の賃金を上げることが絶対条件です。また、革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を目的とした設備投資を支援する「ものづくり補助金」や、小規模事業者が行う「販路開拓」や「それと一体の業務効率化」の取り組みを支援する「小規模事業者持続化補助金」などにも賃金引上げに関する要件や特例があります

<賃上げ支援助成金のパッケージ(厚労省)>
 職場内の最低賃金引き上げ+設備投資等による業務効率化に取り組むことで申請ができる「業務改善助成金」など、厚労省の賃上げ支援助成金パッケージには、他にも「キャリアアップ助成金・働き方改革推進支援助成金・人材開発支援助成金・人材確保等支援助成金」があり、どれも2026年に見直しや拡充が見込まれています。