MURC

コラム

ジョブ型に求められる
タレントマネジメントシステム選定のポイント

2023 年2 月3 日

小寺 宏樹(こでら ひろき)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部組織人事ビジネスユニット

HR第1部 コンサルタント小寺 宏樹

人事制度改革やタレントマネジメントシステムの導入等を得意分野とし、
組織人事領域を中心に50以上のプロジェクトを担当

 2020年の新型コロナ流行を契機に、年功的な人事制度からの脱却や、高度専門人材の活用等を理由としてジョブ型の人材マネジメントを導入する企業が増えている。
 一般的にジョブ型の人材マネジメントでは、ジョブディスクリプションの作成や職務評価の実施等が発生し、メンバーシップ型と比較して人事部及び現場の負担が大きい。そのため、人事部及び現場の負担軽減のために、タレントマネジメントシステムを導入することが望ましい。
 本稿ではジョブ型の人材マネジメントを円滑に運用していくうえでのタレントマネジメントシステムを導入する際のポイントについて解説する。

なぜタレントマネジメントシステムの導入が必要なのか

 ジョブ型の人材マネジメントの主な特徴として、「①経営目標の達成に向けて必要なポジションを特定し」、「②ポジション別に報酬を定め」、「③ポジションに適した人材をアサインする」の3点が挙げられる。①の実現には「ポジション要件の明確化」が、②の実現には「職務評価」が、③の実現には「タレント情報の一元管理」が求められる。しかし、それぞれをExcelでの運用や勘と経験によって行っていると、最適なタイミングで最適な人材をアサインすることができない。
 上記を解決するには、Excelで運用していた業務をシステム上で完結させ、人材情報を一元管理し、ポジションに必要な人材を検索、アサインしていくことが求められる。その方法論として、タレントマネジメントシステムの導入が極めて有用と考えられる。

タレントマネジメントシステムを選定するうえでのポイントは何か

 タレントマネジメントシステムを選定するうえでのポイントは3つある。(下図参照)

タレントマネジメントシステム選定ポイント

(出所) MURC作成  

 1つ目は、ポジション管理機能の有無である。ポジション管理を行う上では、ポジションに必要な情報(主な職責、KPI、職務遂行に必要な専門性・スキル等)を持たせることが必須となる。メンバーシップ型を前提としたタレントマネジメントシステムの場合、人(社員)を軸としたシステムとなっており、人に直接紐づかない組織やポジションに関する情報を管理しきれないことがある。例えば、ポジションのデータベースを持っておらず、組織階層とは別に必要なポジションの情報や、そのポジションに求められる専門性やスキルの管理が難しいといったケースである。
 2つ目は、現場と人事部の相互コミュニケーション機能の有無である。ジョブ型の人材マネジメントでは、ジョブディスクリプションの作成や職務評価、ポジションへアサインする人材の検討等、現場が主体となる業務の重要度が増す。そのため、タレントマネジメントシステムにおいても、現場と人事部が協働でシステムを活用し、各々の作業内容を参照・承認できる仕組みが必要となる。
 3つ目は、タレントプール作成機能の有無である。ポジションに合致する人材を抽出し、タグ付けをする機能であり、ポジションにアサインする人材を効率的に管理するうえで必要となる。特に、ポジション別に次世代候補・次々世代候補まで管理することができると、詳細な人材育成計画の立案に役立てることもできる。なお、人材を抽出・タグ付けする前提となる、人材情報の一元化・検索機能はいうまでもなく不可欠であるが、一般的なタレントマネジメントシステムであれば、標準機能として実装されている。

最後に

 一概にジョブ型の人材マネジメントの導入といっても、各社でその目的は異なっている。タレントマネジメントシステムはあくまでもツールであるため、目的に沿ったシステムを選定することが重要である。上段で述べた通り、ジョブ型の人材マネジメントに必要な機能が備わっているかというように、自社がやりたいことを実現できるシステムとなっているかが選定時の大前提であることを忘れてはならない。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部 組織人事ビジネスユニット

HR第1部 コンサルタント小寺 宏樹(こでら ひろき)

  • 経歴

    三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社入社後、組織人事領域を中心に50以上のプロジェクトを担当

  • プロジェクト実績

    人事制度改定(ジョブ型含む)
    タレントマネジメントシステムの導入支援
    育成体系構築 等

  • 専門領域

    人材マネジメント・人事制度設計全般