DCS

コラム

人材価値の向上により、より魅力ある企業を造る
「人的資本経営」に欠かせない考え方とは?

2023 年9 月28 日

 激動の時代、日々経営環境や社会情勢が変化する中、企業成長を目的とした「企業価値の向上」を目的とし、人材が持つスキルや知識、ノウハウ等を可視化し、企業の資産として活用することは、中長期的な企業の成長に必要不可欠な要素となっています。にもかかわらず、企業価値という視点では、企業全体の財務的価値に重きを置く経営者が多く、「人的資本」は見落とされがちでした。
 2023年3月期決算より対象企業において人的資本の情報開示が義務化されるなど、昨今よく耳にする「人的資本経営」は、企業価値向上における重要なキーワードとなっています。本稿では、「人的資本経営」が注目される背景、企業価値の向上に不可欠な人材戦略の変革、戦略的アウトソーシングの重要性について解説していきます。


トピックス

人的資本経営が注目されている背景とは

 次世代のインターネット技術の「Web3.0」、生産の自動化や、コンピューター化を目指す技術的コンセプト「industry4.0(第四次産業革命)」など情報と産業市場の革命、少子高齢化による労働人口の不足、人生100年時代を迎えて変わるキャリア観など、企業を取り巻く情勢は目まぐるしく変化しています。こうした背景から、持続的な企業価値を高めていくには事業に影響を及ぼすイノベーションや付加価値を生み出す専門人材の育成・確保が急務であり、経営戦略と密接にリンクした人材戦略が重要な考え方となります。そこで注目されているのが「人的資本経営」です。

 人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、“中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方”と定義されています。

出典:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html

 経済産業省が約3,800社の国内上場企業に行ったアンケート調査によると、「戦略実現のための組織・制度等」の項目において、「DX推進を支える人材像が明確で、確保のための取り組みを実施している」企業は7割、「外部リソースの活用ができている」企業は8割という結果でした。

 さらに、企業価値の向上につながるDX推進の仕組みを構築し、実績を持つ「DX銘柄企業」は相対的に売上高が大きいという結果になりました。人的資本の活用や成長は、収益の拡大・投資対効果の向上という視点においても重要な施策だと認識している企業が多いことがわかります。

 企業の競争力の源泉となるのは、まさしく「人財」と考えられてきています。企業の経営層においては、経営戦略と連動した人材戦略やデジタルシフトへの関心が高まっていると言えるでしょう。

※出典:学校法人産業能率大学総合研究所「2022年度 人的資本経営・DXに関する役員の意識調査」
https://www.hj.sanno.ac.jp/cp/research-report/2023/03/01-01.html

経営戦略と人材戦略の連動が企業価値向上には不可欠に

 経済産業省は、企業や個人を取り巻く環境が大きく変化するなか、経営における多様な課題に対し、持続的な企業価値の向上には「人材」を「資本」として捉える人材戦略の変革が不可欠だと示しました。『人材版伊藤レポート2.0』では変革の方向性や、経営陣、取締役会、投資家が果たすべきアクションなどが報告されています。

 レポートには、「変革をリードする経営陣は、経営戦略を明確化した上で人材戦略と連動した施策の策定や実行が重要」だと明記されています。しかし、多くの企業で経営戦略と人材戦略が連動されておらず、人的資本経営の取り組みが遅れているというデータもあります。時代の変化のスピードについていけず、従来の人事戦略の限界が露呈している状況ともとれます。

 人的資本経営の取り組みが遅い企業が多い理由として、いまだ従業員を「消費される人的資源(コスト)」だとする考えが根強いことが背景として考えられています。しかし、企業価値を高めて長期的に成長するためには、「人的資本」への投資は欠かせません。人的資本経営を実践するには、経営層と人事部門が認識合わせをして経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかを定め、目指すゴールを共有することが重要でしょう。

※出典:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~人材版伊藤レポート~
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_4.pdf

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進と人材戦略の板挟みで人事部門はマンパワー不足に

 人的資本経営を目指し、人材戦略に取り組む人事部門ですが、人手が足りていないという目下の課題があります。

 先述したように、専門人材の確保と最大活用、生産性向上を目指し、デジタルシフトへのニーズが高まっていますが、デジタル人材の不足がDX推進の大きな足かせとなっています。
 この「足かせ部分」について、参考となる調査データが独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が公表した『DX白書2023 』となり、DX人材の「量」と「質」について、公表されています。
 結果、日本企業において「DX人材の量の確保が大幅に不足している」という回答は49.6%、「DX人材の質の確保が大幅に不足している」の回答は51.7%といずれも2021年度より増加しています。DX推進に取り組む企業の割合が増加したのに対し、必要な人材が追い付いていない状況が伺えます。

 このような背景からも、人材戦略への取り組みに加えてDX推進への対応も求められるなど二重課題を抱える人事部門は、深刻な人材不足に悩まされています。

※出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf

人材戦略を加速させるなら「アウトソーシング」の戦略的活用が有効

 ビジネスプロセス効率化や専門人材不足への有効な手段の一つとして、 アウトソーシングが注目されています。企業が外部の人材を活用する場合、以下のような目的が考えられます。

① コストの圧縮
② より戦略的な業務への集中
③ 外部の専門人材を活用

 ここで挙げた①②はDX実現に必要なシステム開発や技術など、業務の特性上「社内リソースで対応することが困難」または「本来やるべき業務にリソースが割り当てられない」という背景が前提にあり、外部委託によってコストを抑えるという意味合いが強い傾向にあります。アウトソーシングが真に「戦略的選択」の意味合いを成すケースは「③外部の専門人材を活用」だと言えます。

 単純なコスト削減という目的から一歩踏み込み、高い専門性を持つ人材を外部から調達することで、戦略的に企業価値向上にコミットする成果を創出することが期待できます。人材戦略を加速させるためには「求められる成果につなげるため、適宜アウトソースを活用する」という観点で経営戦略を考えられるかが重要といえるでしょう。

 人事給与業務のアウトソーシングには、以下のように自社リソースの活用、コスト最適化、業務継続性の担保など多くのメリットがあります。

アウトソーシング活用のメリット3つ
メリット① 人事給与の業務を専門に行っているため、豊富な知識・経験を持つ外部の人材の業務を任せることができる。結果として自社の貴重なリソースを戦略業務に充てられる
メリット② 業務量に合わせて人材を雇用する必要がないため、人員数・労働時間の最適化ができる
メリット③ 業務の属人化防止や、もしもの時に業務継続性を担保できる

「PROSRV」導入で人事リソースの最大化を実現する

 人事が選ぶべきアウトソーシングとは、何でしょうか。それは、柔軟性・正確性・拡張性に優れた人事業務特化型の支援サービスです。

 組織変革の施策として注目が集まる「ウェルビーイング経営」に取り組む企業が増え、社内向け従業員意識調査ツールを提供する外部モチベーション管理ツールとの連携、従業員の能力開発、人事データの活用(タレントマネージメント等)といった戦略的人事の動きも強まっています。また、働き方改革に伴うさまざまな法改正、制度改革対応は複雑かつ高度化しています。

 人事給与部門は、毎月の給与支払いや入社・退社手続き、さらに年末調整や地方税年度更新などシーズンごとの煩雑な作業に加え、組織成長を見据えた多様な戦略業務にも対応することが求められています。人事の現場が抱える問題を解決するための打開策が必要な状況です。

 三菱総研DCS株式会社が提供する人事給与関連サービスの「PROSRV(プロサーブ)」は、煩雑な給与計算のシステム化と給与業務に関連する事務作業等をアウトソースすることで業務を効率化し、人事部門が本来取り組むべき、人事制度の構築や従業員の働きやすい環境づくりへリソースを集中させることで、「戦略的業務」へのシフトを後押しさせていただく事が可能です。

 また、企業ごとの課題に合わせて、サービス提供範囲を柔軟に選択できる点が大きな特長です。導入から運用に際しては約4ヶ月の準備・試験運用期間を必要としますが、制度やシステムなど企業ごとに独自の運用ルールがある場合は、事前に丁寧にヒアリングした上で無理のない導入計画を検討するなど、これまで培った経験から最適なご提案をさせていただいております。

50年以上にわたって、人事業務の変革をアシストしてきた実績

 三菱総研DCSは50年以上にわたり、業界や規模を問わず多くの企業に人事給与関連業務を提供し、支えてきました。現在約2,000社の企業様にご活用いただき、給与計算の月間処理人数は55万名を超えます。

人事給与BPOサービス「PROSRV」の特長
状況に合わせてサービスの選択が可能 クラウド型人事給与システムをベースに、年末調整事務、地方税年度更新事務、給与全般の業務など、必要な業務を必要なだけアウトソースできる
長年の実績により培った人事給与業務のノウハウを提供 50年以上にわたり人事給与関連業務を提供し、2,000社以上の人事給与業務に携わってきた。導入実績から得たノウハウで、業界・規模に合わせた標準運用テンプレを用意
柔軟なサービス設計・対応 定期的なユーザーアンケートを通じて、課題や顧客ニーズの分析を行い、改善。人事申請機能(身上申請)のモバイル対応を実装し、デジタルシフトを加速させるといった取り組みを実現している

まとめ

 企業価値向上に欠かせない人的資本経営の考え方、人事部門の課題解決に必要なサービスを解説した。「HRTech」といわれる、人事関連業務の自動化、効率化を目的としたツールが近年急増しています。自社にフィットするサービスを見つけ、選択する事が重要であると言えます。

 三菱総研DCSでは、業界や規模を問わずさまざまな企業の人事給与業務に携わってきた実績から、業務標準化に向けた人事給与システムを実現できるソリューションを提供しています。バックオフィスの業務負担を軽減するためアウトソーシングの活用を検討している方、社内人材の最適な配置検討や、コスト最適化の手段にお悩みの方は、一度ご相談ください。