社労士

コラム

「SAFEコンソーシアム」「副業・兼業促進ガイドライン」など 人事労務関連レポート2022年8月号

2022 年8 月3 日

三菱総研DCS、社労士事務所による人事労務市場の「今」を解説。今日から業務に役立つ情報から今後の法改正などの情報までトータルでお届けいたします。

トピックス

従業員の幸せのためのSAFEコンソーシアム立ち上げ

 厚生労働省では6月20日に従業員の幸せのための安全アクションを推進する活動体「従業員の幸せのためのSAFEコンソーシアム」を立ち上げました。 これは、経済産業の変化、成長産業における人手不足、働き方の多様化、顧客第一の文化、従業員の安全を守る視点の欠如、対策に取り組むメリットが見えないなどのさまざまな問題がある中で、 労働災害、特に日常生活でも発生しうる転倒や腰痛などの災害が増加している課題について、今後これまでの取組だけではこれらの災害を減少させることが難しくなってきている事情のためです。
 この活動団体は、SAFEコンソーシアムの加盟を募集し(無料)この問題を自分ごととしてとらえ、顧客消費者も含めてステークホルダー全員で解決を図っていくため、趣旨に賛同した企業等でコンソーシアムを構成し労働災害問題の協議や加盟者間の取組の共有、 マッチング、労働安全衛生に取り組み加盟メンバーの認知度向上などのサポートを目的としています。
 小売業・介護業は転倒や腰痛などの災害が増加していることから、SAFEコンソーシアムとして当面これらの業界で複数店舗を経営する中規模程度の企業を対象に、腰痛防止等の取組実施を支援する計画です。
 本レポートで昨年から、「ESG」の「S」や「人的資本の情報開示・ISO30414」等を紹介してきました。これらに、「職場の安全衛生」の取り組みに対する情報開示は基本的に必須事項とされています。
  昨今「メンタルヘルス」の課題は業種を問わず重要となっていることから、職場における心理的安全の確保のための取り組みを、先に示した「労働安全衛生マネジメントシステム」に基づき進めています。安全衛生活動の取り組みは、職場の活性化、生産性の向上に必ず役立つものと確信しています。

厚生労働省、副業・兼業促進に関するガイドライン改定へ

厚生労働省は副業・兼業を希望する労働者が、適切な職業選択を通じ、多様なキャリア形成を図っていくことを促進するため、令和4年7月8日にガイドラインを改定しました。
<改定の概要>

  • ガイドラインの「企業の対応」に新たな項目「副業・兼業に関する情報の公表について」を追加し、企業は、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点から、職業選択に資するよう、副業・兼業を許容しているか否か
     また条件付許容の場合はその条件について、自社のホームページ等において公表することが望ましいとしています。
  • ガイドラインの「労働者の対応」では、適切な副業・兼業先を選択する観点から、上記の取組によって企業から公表される情報を参考にすることが追加されています。

     ガイドライン改定案の資料では、従業員の副業を容認する企業は、2021年と2018年を比較すると3.8ポイント上昇しており、企業内に容認する動きが広まっていると言えます。
     今回の改定は、三度目の改定です。初版(H30.1)は、副業・兼業について現行の法令のもとで留意すべき事項(労働時間や健康管理等)が示され、次の改定(R2.9)では、労働時間等のルールが明確化されました。多様な働き方の容認を促進する今回の改定は、幅広い労働の確保につながることが期待されています。

副業容認状況

障害者のテレワーク雇用に向けた企業向けコンサルティング実施へ
~誰もが挑戦でき、活躍できる社会へ~

 厚生労働省は障害者雇用において、テレワークの導入を検討する企業や、障害者をテレワークで雇用し、様々な課題を抱える企業向けに、無料で5回までのコンサルティングを実施します。

 計画の策定、導入可能な業務の選定、社内理解の促進、コミュニケーション方法、雇用管理方法など経験豊富な障害者専門アドバイザーが悩みに沿ったコンサルティングを行いますので是非ご利用されてみてはいかがでしょうか。

厚生労働省、職場における学び・学び直し促進ガイドライン策定へ

 厚生労働省は、令和4年6月29日、「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を策定しました。ガイドラインでは、職場における人材開発(「人への投資」)の抜本的強化を図るため、労使双方が取り組むべき事項等を体系的に示しています。
 ガイドライン策定の背景には、急速かつ広範な経済・社会環境の変化があります。こうした変化は、職場内の上司・先輩の経験や能力を超えたものであり、 労使双方が持続的成長を図るためには、労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを促進することが重要になってきました。企業からの働きかけと労働者が自ら学ぶ意思の両方が揃うことが大切です。 学びの効果や仕事上の成果に対して、プラスになることが期待できる点を踏まえ、労使双方が取り組むべき事項をガイドラインにまとめてあります。
 労使が取り組むべき事項については、「学びのプロセス」に沿って、次の項目に従い「取組の考え方・留意点」と「推奨される取組例」を具体的に提示しています。

No 項目
1 学び・学び直しに関する基本認識の共有
2 能力・スキル等の明確化、学び・学び直しの方向性・目標の共有
3 労働者の自律的・主体的な学び・学び直しの機会の確保
4 労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを促進するための支援
5 持続的なキャリア形成につながる学びの実践、評価
6 現場のリーダーの役割、企業によるリーダーへの支援

また、労使が取り組むべき事項に対する公的支援策を厚生労働省・経済産業省等で紹介しています。

従業員育成に新助成金-「人への投資促進コース」

岸田政権が重視する「人への投資」の一環として、厚生労働省は、従業員が専門性を身につける学び直しを後押しするため、企業向けの新たな助成制度を創設しました。
1.人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の創設
 従業員に高度なIT訓練を受けさせたり、業務関連分野の大学院に通わせたりした場合、1社あたり年に最大1500万円を支給します。企業の訓練経費を負担する人材開発支援助成金に、定額研修サービスや従業員が自発的に大学などで学びなおした際の費用など、これまで認められていなかった経費も対象に加わり、対面実施を原則としていた訓練が、オンラインでの実施が可能になるなど、新たに「人への投資促進コース」を創設しました。
2.特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)の助成内容拡充
 シングルマザー、高齢者等の就職が難しい人の継続雇用を促すため、特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)の助成内容を拡充しました。対象者がデジタル化、環境といった成長が期待できる分野の業務に就いた場合、企業への助成額が1.5倍に引き上げられました。

東京都 働くパパママ育休取得応援企業に奨励金交付

登録マーク

 東京都は男性従業員の育児休業取得率が高い都内企業を「TOKYOパパ『育業』促進企業」として登録する制度を開始しました。登録企業には、取得率に応じた登録マークを付与し、特設ホームページ上で企業情報を公開します。申込の受付は7月20日から開始されます。
 ※「育業」は「休む」というイメージを一新する愛称として、都が決めた愛称です。
 東京都では、(公財)東京しごと財団と連携して、育児中の従業員の就業継続や男性従業員の育児休業取得を応援する企業に対して奨励金を支給します。

  1. 働くママコース ~都内中小企業への奨励金定額125万円~
  2. 対象企業 環境整備要件 奨励金額
    ◆企業規模
    都内中小企業・法人等
    (従業員数300名以下)
    ◆従業員要件
    1年以上の育児休業から原職に復帰し、復帰後3カ月以上継続雇用されている都内事務所に勤務する女性従業員がいること
    • 復帰するまでの間に復帰支援として面談を1回以上かつ復帰に向けた社内情報・資料の提供を定期的に行ったこと。
    • 育児・介護休業法に定める制度を上回る取組について、令和4年4月1日以降、いずれかを就業規則に整備したこと。
    ①育児休業期間の延長
    ②育児休業延長期間の延長
    ③看護休暇の取得日数の上乗せ
    ④中抜けありの時間単位の看護休暇導入
    ⑤育児による短時間勤務制度の利用年数の延長
    125万円
  3. 働くパパコース ~都内企業への奨励金最大300万円~
対象企業 環境整備要件 奨励金額
◆企業規模 不問
◆従業員要件
15日以上の育児休業から現職に復帰し、復帰後3カ月以上継続雇用されている都内事務所に勤務する男性従業員がいること
①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口の設置)
③従業員の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④従業員への育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
育児休業
15日取得
25万円
以降15日毎25万円加算
上限
300万円