社労士

コラム

「育休関連」「雇用維持対策」など人事労務関連レポート2021年2月号

2021 年2 月9 日

三菱総研DCS、社労士事務所による人事労務市場の「今」を解説。今日から業務に役立つ情報から今後の法改正などの情報までトータルでお届けいたします。

トピックス




育児休業の社会保険料免除拡⼤ ~月内2週間以上の取得も保険料免除対象へ~

 厚⽣労働省は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会にて育児休業期間中の社会保険料の免除措置について、対象を拡⼤する⾒直し案を明らかにしました。同⼀の⽉で2週間以上の取得があれば、⽉の途中で復職しても、その⽉の保険料を免除するとしています。
現⾏制度では、育児休業を開始した⽉から、終了⽇の翌⽇の前⽉までについて、社会保険料を免除しており、⽉末から取得し翌⽉の⽉初で復職したケースは免除になる⼀⽅で、月初に取得し月中に復職したケースは免除にならずに取得開始⽇による不公平が⽣じていました。とくに男性の育休については、約8割が1カ⽉以内の短期の取得となっており、取得開始⽇による影響が⼤きくなっているのが垣間見えます。
 今回の⾒直し案では、⽉の末⽇が育休中である場合に加え、同⼀の⽉のなかで2週間以上取得している場合も保険料を免除するとし、短期取得で免除になるケースが増加すると予想されます。
 また賞与に対する免除措置も⾒直されます。現⾏制度は賞与の⽀払い⽉の末⽇に育休を取得していると、賞与の⽀払いを実際に受けても保険料が全額免除となるため、免除目的で賞与の⽀払⽉に短期の育休を取得する労働者がいると指摘されていた。⾒直し案は連続して1カ⽉を超える育休を取得している被保険者に限るとしています。

~まとめ~
現行制度改正後
給与に係る免除 対象月の末日に育児休業中であれば免除 現行制度の対象者の他、同月内に2週間以上育児休業を取得した者(月内での復職でもOK
賞与に係る免除 対象月の末日に育児休業中であれば免除 現行制度を見直し、連続して1ヵ月を超えて育児休業を取得した者に対して免除する

詳細・資料(第135回社会保障審議会医療保険部会 資料)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15049.html




『男性の産休』新設へ 育休取得の働きかけ義務化方針

 男性の育児休業の取得を進めるため、厚生労働省は企業に対し、労働者に取得を個別に働きかけることを法律で義務付ける方針を固めました。
 子どもが生後8週までなら、2週間前までの申請で取れる「男性産休」も新設されます。
 取得を後押しする制度を整え、男性が休みたいと言いづらい職場の雰囲気を変える狙いがあります。育休は、子どもが原則1歳になるまで男女とも取得できますが、男性の育休取得率は2019年度で7.48%にとどまっており、当初の目標だった13%(2020年)と比べて大幅に伸び悩んでいます。
 政府は少子化大綱でさらに目標値を上げて、2025年の取得率を30%とし、同時に制度改正に取り組んできました。
 2018年度の厚労省の委託調査では、取得しなかった男性の2割が「職場が取得しづらい雰囲気だった」を理由に挙げました。今も企業には、育休を取れることを労働者に知らせる努力義務はありますが、強制力がありません。職場からの働きかけが「特になかった」と答えた男性が6割でした。
 厚労省は今回、育休の対象となる労働者に、個別に育休取得を促すことを義務化する方針です。口頭で働きかけたり、取得の意向を確認したりすることなどを想定しています。違反して国の指導に応じなければ、企業名を公表する規定も設けます。個別周知すれば、女性も働き続ける人が増える可能性があります。
 通常の育休は取得の1か月前までに申請する必要がありますが、妻の産後うつのリスクも高い子どもの出生直後の男性の育休取得を促すため、生後8週までは、2週間前までの申し出で最大4週休める「男性産休」の制度を設けます。2回までの分割取得が可能で、労使であらかじめ予定を決めた就労も可能とします。
 厚労省が12月14日、労働政策審議会の分科会で提案し、2021年の通常国会で関連法の改正法案を提出し、2022年度からの実施を目指します。




産業雇用安定助成金(仮称)の創設が予定されています。

 新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して助成する「産業雇用安定助成金(仮称)」が創設される予定です。
 制度の創設には、第三次補正予算案の成立、厚生労働省令の改正等が必要であり現時点では予定となります。

助成金の対象となる「出向」

■対象:雇用調整を目的とする出向(新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向)が対象。

■前提:雇用維持を図るための助成のため、出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことが前提。

対象事業主

①新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされたため、労働者の雇用維持を目的として出向により労働者(雇用保険被保険者)を送り出す事業主(出向元事業主)

②当該労働者を受け入れる事業主(出向先事業主)

助成率・助成額

○出向運営経費
出向元事業主および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費など、出向中に要する経費の一部を助成します。
中小企業中小企業以外
出向元が労働者の解雇を行っていない場合 9/10 3/4
出向元が労働者の解雇を行っている場合 4/5 2/3
上限額 12000円/日 12000円/日
○出向初期経費
就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるために用意する機器や備品などの出向に要する初期経費の一部を助成します。
出向元事業主出向先事業主
助成額 10万円/1人当たり(定額)
加算額 5万円/1人当たり(定額)

※出向元事業主が雇用過剰業種の企業や生産性指標要件が一定程度悪化した企業である場合、出向先事業主が労働者を異業種から受け入れる場合について、助成額の加算を行います。

助成金を受給するまでの流れは以下を予定しております。

助成金を受給するまでの流れ
助成金を受給するまでの流れ

またその他にも、コロナ過により雇用過剰となった企業と、人手不足となっている企業とで雇用維持を目的として出向を活用する場合に、出向元企業と出向先企業に出向のマッチングを産業雇用安定センターが無料で支援しています。




俳優ら 来年度労災保険適用へ

 フリーランスで働く人の保護を強化するため、厚生労働省は昨年12月8日、俳優などの芸能従事者やアニメーターなどのアニメーション制作従事者、柔道整復師として働く個人事業主について、労災保険への加入を認める方針を固めました。
 現時点では、建設業の一人親方などが対象の「特別加入制度」を適用としていますが、今後、省令の改正手続きを経て来年度に導入します。
 政府の統計によると、芸能従事者の人口は約21万8千人、柔道整復師は約7万3千人、アニメーターは業界団体の推計で約1万人いるとされています。厚労省は現時点で、このうち計約1万5千人の特別加入を想定しています。




従業員であり自営業も営む方の雇用保険加入要件が変更になります。

 これまでは、従業員として勤務しつつ、自営業を営んでいる場合等(自営業を営む場合のほか、他の事業主の下で委任関係に基づきその事務を処理する場合(雇用関係にない法人の役員等である場合)を含む)は、自営業等による収入の方が従業員としての収入より多い場合、雇用保険の被保険者とされていませんでした。
 しかし、離職し、同時に自営業等の収入がなくなった際、雇用保険の被保険者でなければ失業給付を受け取ることができません。そのような事態を避けるため、令和3年1月1日より、従業員の方が自営業等の収入があっても、労働条件が雇用保険の適用要件を満たしている場合、自営業等の収入の金額に関わらず、雇用保険の被保険者となり取得届の提出が必要となります。
1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、31日以上の雇用の見込みがあること。
令和2年12月31日以前から継続して雇用している場合、令和3年1月1日から被保険者となります。

《自営業等を営む方を雇用した場合の雇用保険の適用例》
〈例1〉令和3年1月1日以降に新たに雇用した場合
→ 雇用した時点から被保険者となります。
〈例1〉令和3年1月1日以降に新たに雇用した場合
〈例2〉令和2年12月31日以前から雇用し令和3年1月1日以降も継続して雇用している場合
→ 令和3年1月1日より被保険者となります。
〈例2〉令和2年12月31日以前から雇用し令和3年1月1日以降も継続して雇用している場合