社労士

コラム

「持続可能な開発目標(SDGs)」について①

2019 年10 月4 日

SDGsとは

 9月17日、安倍首相も出席する国連総会が開催されました。 23日は気候変動問題を協議し、24日は「持続可能な開発目標(SDGs)」の進捗を各国の首脳で話合われます。 SDGsは2015年9月国連サミットで、より良き将来を実現するために2030年までに、極度の貧困、不平等、不正等をなくすための計画「アジェンダ30」を採決しました。 17の「ゴール」と169の「ターゲット」で構成されています。 我が国はSDGsの実現に向けて「Society5.0」を策定して施策を進めています。(詳細は次号)


SDGsと企業活動

 企業活動もこうした動きと無関係ではありません。企業の目先の利益追求のため、人件費や安全対策、環境対策はコストとしてできるだけ削減することは企業活動にとって経済的合理性があるとされていました。 結果、貧富等の格差の拡大、自然環境の悪化による原材料の安定供給が阻害されるなど「持続可能な経済成長」を難しくする状況が生まれ大きな社会的課題として認識されるようになりました。 この反省から短期価値より長期的視点にたった企業活動、企業経営を社会価値の根幹に据える考えがグローバル企業を中心に広がり始めています。 もっともこうした真髄は既にドラッカーが企業活動における「利益」に関し、利益は不確定性というリスクに対する保険である。 よりよい労働環境を生むための原資である。医療、国防、教育、文化など社会的なサービスと満足をもたらす原資であると述べていることに相通ずるものがあります。 こうした観点で活動する企業にとって「持続可能な開発目標(SDGs)」は「経済価値と社会価値」を実現する新たなビジネスチャンスの可能性があると指摘されています。 金融機関等が企業のESG(環境Environment・社会Social・ガバナンスGovernance)投資の取り組みを評価して積極的にESG投資を実行していることは注目されます。 コンサルタント会社のモニター・デトロイトも、SDGs対応は「義務」ではなく「戦略」である。 「事業が成長し、市場シェアを高めるほど世界がより良くなる」経営の実現を追及するものであり、「産業革命」と「経営革命」に同時に向き合うものと指摘しています。


国連グローバルコンパクト

 非政府組織で、民間組織(企業、各種団体等)が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組みが国連グローバル・コンパクトとして2000年から活動が始められています。 国連グローバル・コンパクトはSDGsをはじめとする国連の掲げる目標の達成に向けて活動を推進しています。現在世界で企業・団体等の署名数は約13,750に達しています。

iDeCo加入規制緩和、厚生労働省が検討に入る

 去る7月29日に日本経済新聞がトップ記事として「イデコ加入全会社員に」と報じ、多くのメディアでもその解説や将来の見通しが取り上げられました。 これまで企業型確定拠出年金(以下企業型年金)に入っている場合、労使合意の下で個人型確定拠出年金(以下iDeCo)への加入を併用する場合、企業の拠出金限度額を下げなければいけませんでした(5.5万円から3.5万円に引下げとなる)。 イメージ的には「上乗せ」と感じる併用ですが、掛金総額が増やせる訳ではなく、ハードルの高い労使合意による規約変更が必要であったり、企業型年金の拠出方法によってはiDeCo加入がそもそも不可能であったりする等、様々な制約がありました。 そういった現状の中、企業型年金の加入者であっても拠出限度額を下げる事なくiDeCoに加入できるよう、法改正を目指し、厚生労働省の検討が始まりました。

◆確定拠出年金とは
 従前の企業年金は「中小零細企業や自営業者に十分普及していない」、「離転職時の年金試算の持ち運びが十分確保されていない為、労働移動への対応が困難である。」といった問題点が指摘されていました。そこで2001年(平成13年)10月、公的年金の受取に上乗せで受給することができる私的年金の一つとして確定拠出年金の運用が始まりました。

◆確定拠出年金の種類
企業型年金(事業主が掛金拠出)と個人型年金(加入者個人が掛金拠出)に大別されます。

★確定拠出金制度の概要(平成30年5月1日からの内容)

    企業型年金
  • 実施企業に勤務する従業員が加入できる
  • 掛金を企業が拠出する
  • 拠出限度額は月額55,000円
    個人型年金(iDeCo)
  • 加入できる人
  • ①自営業者等(国民年金第1号被保険者)
    ②厚生年金被保険者(国民年金第2号被保険者)
    ③専業主婦(夫)等(国民年金第3号被保険者)
  • 掛金を加入者自身が拠出する
  • (iDeCo+【※後述:イデコプラス】を利用する場合は事業主も拠出可能)
  • 拠出限度額は最大で月額68,000円
  • ※iDeCo+: iDeCoに加入する従業員の掛金に事業主が追加して拠出できる制度です。事業主が拠出した掛金は全額が損金算入できます。

★税制上のメリット
    企業型年金
  • 非課税、事業主が拠出した掛金額は全額損金算入できる
    個人型年金(iDeCo)
  • 非課税、加入者が拠出した掛金額は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)できる又、iDeCo+を利用し、事業主が拠出した掛金額は全額損金算入できる

参考URL
年金、確定拠出年金制度(厚生労働省HP内)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/index.html#h2_4

iDeCo公式サイト
https://www.ideco-koushiki.jp/


平成30年度 監督指導による賃金不払残業の是正結果

 厚生労働省は、平成30年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめた結果を公表しました。 これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、不払だった割増賃金が支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。 監督指導対象となった企業では、生体認証による労働時間管理システムの導入や、労務管理について記載されたガイドラインの作成・周知など、賃金不払残業の解消のために様々な取組が行われています。 詳しくは下記URLをご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06128.html

【平成30年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント】
(1) 是正企業数 1,768企業(前年度比 102企業の減)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、228企業(前年度比 34企業の減)
(2) 対象労働者数 11万8,837人(同 89,398人の減)
(3) 支払われた割増賃金合計額 125億6,381万円(同 320億7,814万円の減)
(4) 支払われた割増賃金平均額 1企業あたり711万円、労働者1人当たり11万円

平成30年 東京労働局定期監督等の実施結果

 東京労働局は、平成30年に管内の18労働基準監督署(支署)が実施した定期監督等の結果について取りまとめた結果を公表しました。

【定期監督等の実施結果のポイント】

(1)定期監督等の実施事業場数 12,668事業場
 このうち9,188事業場(全体の72.5%)で労働基準関係法令違反あり。
 違反率が高かった業種(上位5業種)
  清掃と畜業(84.1%)保健衛生業(81.8%)製造業(80.4%)
  接客娯楽業(79.5%)商業(79.3%)

(2) 主な違反内容
 ●違法な時間外労働があったもの 2,837事業場(22.4%)
 ●割増賃金不払があったもの 2,470事業場(19.5%)
 ●機械・設備等の危険防止措置に関する安全基準に関する違反があったもの 2,346事業場(18.5%)

①労働基準法違反

労働条件明示 賃金不払 労働時間 休憩 休日 割増賃金 就業規則 賃金台帳
1336 541 2837 396 219 2470 1077 1500

★送検事例
36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行なわせていたもの。他2件

②労働安全衛生法違反

安全衛生
管理体制
作業主任者 安全基準 衛生基準 特定元方事業者
・注文者
定期
自主検査
作業環境
測定
健康診断
1096 359 2346 304 699 181 163 2051

★送検事例
高さ約3mの作業床で、手すり等を設けることなく労働者に作業を行なわせたもの。他12件


労働基準監督署は、定期監督等を実施し、法違反などを確認した場合は是正・改善を指導しています。 また、重大・悪質な違反に対しては、送検手続きをとるなどしています。 定期監督等とは、各種の情報、労働災害の報告などを契機として、労働基準監督官が事業場に対して実施する立入検査のことです。


2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます

 現在、政府全体で行政手続に要する事業者の作業時間を削減するため、電子申請の促進が図られており、下記に該当する特定の法人の事業所が、社会保険・労働保険に関する下記の一部手続を行う場合は必ず電子申請で行うことになりました。

特定の法人とは
○資本金、出資金又は銀行保有株式取得機構に納付する出資金の額が1億円を超える法人
○相互会社(保険業法)
○投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)
○特定目的会社(資産の流動化に関する法律)

一部の手続とは 健康保険
厚生年金保険

○被保険者報酬月額算定基礎届

被保険者報酬月額変更届

○被保険者賞与支払届

労働保険

○継続事業(一括有期事業含む)を行う事業主が提出する以下の申告書

  • 年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書)
  • 増加概算保険料申告書
雇用保険

被保険者資格取得届

被保険者資格喪失届

○被保険者転勤届

○高年齢雇用継続給付支給申請

○育児休業給付支給申請



60歳以上の労災死傷者急増

 労働災害を巡り、60歳以上の死傷者が増加しています。 厚生労働省によると、昨年は3万3246件でこの5年間で7,500人近く増加したとのことです。 その割合も全体の4分の1を占め、主にサービス業での転倒や腰痛などが増加傾向にあります。 人手不足が深刻化する中、体力の衰えた60歳以上の労働者の増加が原因です。 この問題に対し、厚労省の有識者検討会は年内にも健康管理や業務上の配慮など必要な対策をまとめた指針を策定することになりました。