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コラム

「雇用保険マルチジョブホルダー制度」「パワハラ防止対策の「自主点検票」の活用」など人事労務関連レポート2021年12月号

2021 年12 月6 日

三菱総研DCS、社労士事務所による人事労務市場の「今」を解説。今日から業務に役立つ情報から今後の法改正などの情報までトータルでお届けいたします。

トピックス

「雇用保険マルチジョブホルダー制度」新設 令和4年1月から

複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、選択した2つの事業所での勤務を合計し下記の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができるようになります。
失業した場合には、一定の条件を満たせば、高年齢求職者給付金を受給することができます。

マルチ高年齢被保険者の要件

以下のすべての要件を満たすことが必要です。
①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
②2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

基本的な手続の流れ
  • マルチ高年齢被保険者として適用を希望する場合は本人が手続きを行います。
  • 事業主は本人からの依頼に基づき、手続きに必要な証明(雇用の事実や所定労働時間など)を行う必要があります。
  • マルチジョブホルダー(マルチ高年齢被保険者の要件を満たしているが、資格取得を未手続の者)は適用を受ける2社の必要書類を揃えて、本人の住所又は居所を管轄するハローワークに申出(提出)します。※電子申請での届出はできません。
  • 取得の場合は申出日が取得日で、任意脱退はできません。喪失の場合は要件を満たさなくなった日に資格を喪失し、被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に届出が必要です。

※資格取得日から雇用保険料の納付義務が発生します。
※事業主はマルチジョブホルダーが申出を行ったことを理由として、解雇や雇止め、労働条件の不利益変更など、不利益な取扱いを行ってはならないこととされています。

詳細については、下記の厚生労働省・都道府県労働局が発行しておりますリーフレットをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389_00001.html

中小企業・パワハラ防止対策の「自主点検票」の活用を

中小企業における職場のパワハラ対策の義務化(令和4年4月1日)が目前に迫る中、東京労働局が「自主点検票」を作成し、公開しています。
「自主点検票」は、事業主の責務として義務付けられている10の措置事項(改正労働施策総合推進法)について、各企業が、自社の対応状況をチェックできるようになっています。さらに、措置事項ごとのポイントをまとめた「解説書」や、各点検項目の具体的な対応例を示した「解説動画」も公開されており、取組みが未了の事項については、これらを活用することでより効果的に準備が進められます。
パワハラ対策を実施するためには、就業規則の見直し(パワハラ行為者への懲戒規定、ハラスメント防止規定、相談者の不利益取扱い禁止を定めるなど)も必要となり、義務化直前に対策を開始するのでは間に合わなくなる可能性が高いです。そのため、このようなツールを活用し、計画的に準備を進めることが重要です。
【自主点検の詳細】
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/kyoku_oshirase/_120743/jisyutennkenn.html

ダイレックス事件(長崎地判令3. 2. 26)

1か月単位の変形労働時間制を導入し、残業30時間を加えた勤務割を組んでいたところ、従業員が未払割増賃金を求めた事件。長崎地裁は、週40時間平均の条件を満たさず制度を無効とした。

事件の概要

被告会社の就業規則には「①毎月1日を起算日とする1か月単位の変形労働時間制を採ること ②所定労働時間は1か月を平均して1週間40時間とすること ③その所定労働時間、所定労働時間ごとの始業および終業時間は事前に作成する稼働計画表により通知されること」が定められ、前月末頃、翌月分の稼働計画表を掲示していた。計画表には当月の各日における出勤日と公休日の区別、出勤日について出社時間、退社時間、休憩時間が記載されていた。これにより設定された労働時間の合計は、1か月の所定労働時間にあらかじめ30時間が加算されたものであった。

判決のポイント

変形労働時間が有効であるためには、変形期間である1か月平均労働時間が1週間あたり40時間以内でなければならない(労働基準法32条の第1項、32条1項)。1か月の歴日数が31日の場合の労働時間は171.1時間であるにもかかわらず、被告の稼働計画表では原告の労働時間は1か月の所定労働時間にあらかじめ30時間が加算(1か月の歴日数が31日の場合207時間など)されて定められている。そのため1か月の平均労働時間が1週間あたり40時間以内でなければならないとする法の定めを満たさない。被告の定める変形労働時間制は無効であり、本件において適用されない

まとめ

1か月単位の変形労働時間制を採用する場合に、シフト表等で定めた所定労働時間が1週平均40時間を超える場合については制度を無効とし、1週40時間を超える部分はすべて時間外労働に該当し、割増賃金の支払いを命じられる事例が近年増加しており留意が必要である。本件もその一例である。

くるみん認定・プラチナくるみん認定を受けた中小企業への助成金

くるみん認定・プラチナくるみん認定を受けた中小企業事業主は助成を受ける年度において「中小企業子ども・子育て支援環境整備事業」を実施する場合、その実施に要する経費を対象に50万円の助成を受けることができます。
実施期間は、令和3年10月から令和9年3月末までです。
くるみん認定については、前年度または当年度(助成申請期間まで)に認定をうけた事業主が対象となり、1回のくるみん認定につき1回の助成(50万円)が行われます。また、プラチナくるみん認定については、前年度の3月31日時点で認定を受けている事業主が対象となり、認定を受けた翌年度から令和8年度まで毎年度助成(50万円)が行われます。
助成金の申請方法などは実施機関である「一般財団法人女性労働協会」にて現在準備中とのことですが、本助成事業の概要については、以下のURLをご参照ください。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/links/pdf/kankyoseibi/leaf.pdf

テレワーク実施率調査結果 ~9月の調査結果~

東京都は、9月の都内企業のテレワーク実施状況について、調査結果を公表いたしました。
調査結果によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は63.9%であり、8月の前回調査(65.0%)に比べて1.1ポイント減少しました。
また、テレワークを実施した社員の割合は、48.9%と、前回(54.3%)に比べて、5.4ポイント減少しました。
1) 東京都産業労働局雇用就業部労働環境課 都政情報
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/10/07/07.html
(参照 2021-10-27)

「一般事業主行動計画の策定・届出及び情報公表義務」の対象拡大(令和4年4月)

『女性活躍推進法』は平成28年(2016年)に施行し、働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会を実現するため、常時雇用する労働者数301人以上の一般事業主に行動計画を策定・届出等するよう義務付けています(300人以下の事業主は努力義務)。令和4年(2022)年4月1日より常時雇用する労働者数101人以上300人以下の一般事業主にも行動計画の策定・届出等が義務化され、対象範囲が拡大となります。

令和3年度 年末調整改正点のご案内

令和2年後半に行政手続きの押印廃止が発表されました。
この影響により、税務関係書類についても、令和3年4月1日以降、原則「押印が不要」となりました。
扶養控除等(異動)申告書など従業員から提出される年末調整関係書類も、従来印字されていた「㊞」が令和3年分の様式から削除されています。